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 3.溶接材料JISの国際整合化改正

新しく制定された溶接材料ISOと古くから日本国内で使用されてきた溶接材料JISとは,体系的に若干異なっている。溶接材料のISO及びJISの規格体系の比較を表3に示す。上段の[表3−1]はISO/TC44/SC3にて合意された規格体系である。中段の[表3−2]はこれまで我が国で使用されてきた規格体系である。ISOとJISの一番大きな相違点は,高張力鋼の区分である。ISO環太平洋規格「System-B」では,引張強さ590MPa級以上が高張力鋼の区分であるのに対し,現行のJISでは,490MPa級以上が高張力鋼の区分である。また,JISでは,我が国特有の「低温用鋼」「耐候性鋼」の区分がある。これらの点を考慮しての国際整合化JIS体系を整理したのが下段の[表3−3]であり,現在その新規格体系に基づいたJIS改正作業の最中にある。
以下に,我が国で多く使用されている溶接材料を例として具体的な新規格体系を説明する。

 4.JIS規格体系の整理:
   軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用溶接材料への統一

現行のJIS規格体系を示した[表3−2] では,軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用溶接材料区分において、被覆アーク溶接棒では,「軟鋼」「高張力鋼」「低温用鋼」の3規格で規定されているが,マグ溶接ソリッドワイヤでは,「軟鋼及び高張力鋼」「低温用鋼」の2規格で規定されている。さらには、フラックス入りワイヤでは「軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼」の1規格で規定されている。そこで,ISO整合化JIS改正を行うタイミングを捉えて顧客の利便性向上を図るために,前記溶接材料品種の区分を「軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼」の1規格で統一して[表3−3]記載のように規定することとした。この背景には,前項記述の通り,ISOの高張力鋼区分が570MPa以上であるのに対し,JISでは490MPa以上の規定であり,ISOに整合化したJISを活用する際の混乱を避ける意味もあって,規格上の軟鋼と高張力鋼区分を統合した規格区分を採用することとした。

 5.JIS規格体系の整理:ステンレス鋼ソリッドワイヤ区分の統合

ステンレス鋼におけるソリッドワイヤのISOと同じく,マグ溶接及びミグ溶接に使用されるJIS Z 3321の「ソリッドワイヤ」区分に,これまで別のJIS Z 3324で規定されていた「サブマージアーク溶接用ワイヤ」と,JIS Z 3322で規定されていた「帯状電極肉盛溶接材料」を統合した。

 6.JIS規格体系の整理:

   サブマージアーク溶接用フラックス規定区分の拡大

サブマージアーク溶接に関するJIS規定は,「ワイヤ」「フラックス」「溶着金属」から構成されている。このうち,「フラックス」については,各対象材料で共通に使用できる種類があることから,ISOでは全ての対象材料を適用範囲としている。そこで,JISにおいても,従来のサブマージアーク溶接用フラックスを規定したJIS Z 3352の適用範囲に加えて,ステンレス鋼,Ni-Ni合金及び硬化肉盛を含めることにより,ほぼ全てのサブマージアーク溶接用フラックスが含まれる適用範囲に拡大して規定することとした。

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本稿は,日本溶接協会機関誌「溶接技術」2009年1月号に掲載されたものをもとに,
直近の動向を踏まえ一部修正しております。記述内容は2009年3月末日現在のものです。

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