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 1.はじめに

JIS Z 3312は,ガスシールドアーク溶接用鋼ワイヤに関する日本工業規格(JIS)として,1974年に制定した規格である。その後,国際単位系(SI)への移行,鋼材JISに対応した変更等の数度の改正を経てきているが,特に1999年改正では,1995年に発生した兵庫県南部地震による災害を契機に溶着金属の機械的性能に関する検討を行ない,鉄骨構造物における溶接部の機械的性能向上の観点から,引張強さ540N/mm2級高張力鋼対応種類を新たに規定した。このJIS Z 3312に属するソリッドワイヤは,現在の国内溶接材料総需要量の約45%を占める主要溶接材料である。
 一方,今回の改正にてJIS Z 3312に統合することとなったJIS Z 3325(低温用鋼用マグ溶接ソリッドワイヤ)は,LNG運搬船,冷凍船,寒冷地における各種構造物,各種化学機械などに広く使用されている溶接材料であり,1990年に制定された規格である。
 本稿では,我が国で最も使用されている溶接材料を規定したJIS Z 3312の改正内容(2009年2月20日改正公示)について解説する。なお,前記の通り,JIS Z 3312:1999で規定されていたワイヤの大半は汎用性の高い主要溶接材料であることから,旧規格で区分していた種類名称も引き続き使用できるように配慮し(後記4項参照),改正の影響軽減を図った。

 2.適用範囲

JIS Z 3312:1999の適用範囲は軟鋼及び高張力鋼用のマグ溶接に使用するソリッドワイヤであったが,ISOとの規格体系の整合化を図るため,低温用鋼用に関する「JIS Z 3325:2000」を統合し,改正JIS Z 3312では「軟鋼,引張強さが490N/mm2級〜830N/mm2級の高張力鋼及び低温用鋼の溶接に使用するマグ溶接及びミグ溶接用ソリッドワイヤ」を適用範囲とした。また,この規格の対応国際規格は下記2件の共存型ISO(2009年1月号参照)を包含しており,そのシステムB(共存型ISOの環太平洋規格部分)のMOD(国際規格を修正して作成した)規格である。

・ISO 14341:2002,Welding consumables−Wire electrodes and deposits for gas shielded metal arc welding of non alloy and fine grain steels−Classification 

ISO 16834:2006,Welding consumables−Wire electrodes,wires,rods and deposits for gas-shielded arc welding of high strength steels−Classification

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本稿は,日本溶接協会機関誌「溶接技術」2009年3月号に掲載されたものをもとに,
直近の動向を踏まえ一部修正しております。記述内容は2009年3月末日現在のものです。

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