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 3.ISOに基づいた溶接ワイヤの種類区分記号の付け方

ISOに基づいた区分記号は,図1に示すように7区分から構成されている。JIS Z 3312:1999及びJIS Z 3325:2000では,一つのワイヤ(銘柄)に対し,一つのワイヤの種類しか分類できなかったが,ISO区分表示によれば,一つのワイヤに対し,溶接後熱処理の有無に応じて溶着金属の引張特性及び/又はシャルピー吸収エネルギーの異なる種類に分類してもよく(例えば,G49A0C12及びG43P2C12),異なるシールドガスとの組み合わせで異なる種類に分類してもよい(例えば,G49A0UC11及びG57A2UM11)。また,ワイヤの化学成分及び溶着金属の機械的性質は独立して選べるようになっている。
 それぞれの記号について,以下に説明する。

a) 1番目の区分Gは,マグ溶接及びミグ溶接用ソリッドワイヤを示している。

b) 2番目の区分XXは,溶着金属の引張特性を示す。改正JISの引張強さの記号を表1に示す。最小引張強さ(MPa)の上二桁を用い区分する方法は,前稿で解説したJIS Z 3211と共通である。なお,JIS Z 3312:1999では,最小引張強さのみを規定していたが,この改正では,最大最小引張強さを規定した(1N/mm2 =1MPa:規格における単位記号の表記変更による)。
また,今回の改正に合わせて,我が国で開発された新鋼材に対応する溶接材料をJIS独自強度区分(表1 の下線付き記号)として以下の通り追加規定した。

1) 橋梁用高性能高張力鋼材BHS500(降伏点500MPa以上)に対応した溶接材料を「57J」,BHS700(降伏点700MPa以上)に対応した溶接材料を「78J」としてJIS独自区分を追加した。

2) 建築用高降伏点鋼材に対応した溶接材料として,降伏点が500MPa以上であるJIS独自区分「59J」を設けた。

3) 耐火鋼用鋼材に対応した溶接材料として,引張強さが520〜700MPaであるJIS独自区分「52」を設けた。

c) 3番目の区分Xは,溶接後熱処理の有無を示すものである。旧規格では規定されていなかったが,国際整合性のためにすべての種類に溶接後熱処理の有無を明確にすると共に,日本国内の事情を考え,次のようにAPを追加した。

1) Aは,溶接のままで溶着金属の機械的性質を確保できるものを示す。

2) Pは,熱処理後溶着金属の機械的性質を確保できるものを示す。

3) APは,溶接のまま及び熱処理後の両方で溶着金属の機械的性質を確保できるものを示す。

d) 4番目の区分Xは,衝撃試験温度を示すものである。表2に衝撃試験温度と溶着金属の衝撃特性を示す。JIS Z 3312:1999では0℃,-5℃及び-20℃の3種類が規定され,JIS Z 3325:2000では-30℃,-45℃,-60℃及び-105℃の4種類が規定されていたが,国際規格との整合化のために,+20℃,0℃, -20から-100℃まで10℃ごと及び衝撃試験を規定しないの12種類を規定し,更に,建築,橋梁分野で使用されている高降伏点鋼の要求値に対応するために,-5℃を追加し,13種類にした。

e) 5番目の区分Xは,吸収エネルギーレベルを示すものである。JIS Z 3312:1999では27J以上及び47J以上の2種類が規定され,JIS Z 3325:2000では,27J以上の1種類が規定されていたが,国際規格との整合化のために27J以上を基本として無印とし,47Jの場合にUを付けることとした。

f) 6番目の区分Xは,シールドガスの種類を示すものである。

g) 7番目の区分XXは,ワイヤの化学成分を示すものである。2,3,4,6及び7は,それぞれAWS A5.18:2001 ER70S-2,ER70S-3,ER70S-4,ER70S-6,及びER70S-7と同じ化学成分であり,11,12,13,15,16,J18及びJ19は,それぞれ旧規格の YGW11,YGW12,YGW13,YGW15,YGW16,YGW18及びYGW19に相当する化学成分である。J18及びJ19は,ISO 14341及びISO 16834では規定されていないが,YGW18及びYGW19に対応する成分として追加した。14は12と比べけい素含有量が多いもの,17は12と比べけい素含有量が少ないものとし,他は,マンガン,ニッケル,クロム及びモリブデンの化学成分レベル及びチタンの有無により合金記号を定めた。表3にワイヤ化学成分の記号とそのレベルを示す。

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本稿は,日本溶接協会機関誌「溶接技術」2009年3月号に掲載されたものをもとに,
直近の動向を踏まえ一部修正しております。記述内容は2009年3月末日現在のものです。

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