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 1.はじめに

JIS Z 3313は,アーク溶接用フラックス入りワイヤに関する日本工業規格(JIS)として,1982年に制定した規格である。このフラックス入りワイヤは,1975年頃から我が国で急速に普及し,造船,鉄道車両,建築,橋梁,化学機械,圧力容器などあらゆる溶接構造物に適用されている。軟鋼,490N/mm2級高張力鋼,590N/mm2級高張力鋼用を適用範囲とするJIS Z 3313:1982が制定された後,さらに適用範囲が拡大しLPG運搬船など−60℃程度までの低温用鋼に適用できるフラックス入りワイヤが開発,実用化されたことに伴い,低温用鋼用への適用範囲を拡大した改正が1993年に行われた。その後,1995年に発生した兵庫県南部地震による災害を契機に溶着金属の機械的性質に関する検討を行ない,鉄骨構造物における溶接部の機械的性質向上の観点から,引張強さ540N/mm2級高張力鋼対応種類を新たに規定した改正を1999年に行った。この規格に属するフラックス入りワイヤは,現在の国内溶接材料総需要量の約30%を占める主要溶接材料である。
 本稿では,フラックス入りワイヤの改正内容(2009年2月20日改正公示)について解説する。

 2.適用範囲

JIS Z 3313:1999の適用範囲は軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接用フラックス入りワイヤであり,適用鋼種範囲は今回の改正と同じであるが,最小引張強さ590N/mm2級までであった高張力鋼の適用範囲を830MPa(1N/mm2 =1MPa:規格における単位記号の表記変更による)級までに拡大し,低温用鋼の適用温度範囲を−60℃から−100℃に拡大している。
 また,この規格の対応国際規格は下記2件の共存型ISO(「溶接材料関連ISO/JISの動きと注意点」参照)を包含しており,そのシステムB(共存型ISOの環太平洋規格部分)のMOD(国際規格を修正して作成した)規格である。

・ISO 17632:2004,Welding consumables−Tubular cored electrodes for gas shielded and non-gas shielded metal arc welding of non-alloy and fine grain steels−Classification 

ISO 18276:2005,Welding consumables−Tubular cored electrodes for gas shielded and non-gas shielded metal arc welding of high-strength steels−Classification

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本稿は,日本溶接協会機関誌「溶接技術」2009年4月号に掲載されたものをもとに,
直近の動向を踏まえ一部修正しております。記述内容は2009年3月末日現在のものです。

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