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 1.はじめに

 JIS Z 3221「ステンレス鋼被覆アーク溶接棒」は1957年に,JIS Z 3321「溶接用ステンレス鋼溶加棒及びソリッドワイヤ」は1969年に日本工業規格(JIS)として制定された。その後,ステンレス鋼帯状電極肉盛溶接材料が原子力及び化学工業用圧力容器内面の肉盛溶接を中心として各所で採用されるようになり,JIS Z 3322「ステンレス鋼帯状電極肉盛溶接材料」が1975年に制定された。また,溶接作業性・高能率性に優れ,溶接コストが低減できる「ステンレス鋼アーク溶接フラックス入りワイヤ」が開発され,ステンレス鋼被覆アーク溶接棒などに代わってめざましく普及したので,1983年にJIS Z 3323「ステンレス鋼アーク溶接フラックス入りワイヤ」として制定された。さらに,1988年には,JIS Z 3324「ステンレス鋼サブマージアーク溶接ソリッドワイヤ及びフラックス」が制定された。
 本稿では,ステンレス鋼溶接材料に係るJIS規格体系の整理とISO整合化JIS改正内容について解説する。なお,JIS Z 3323「ステンレス鋼アーク溶接フラックス入りワイヤ及び溶加棒」は2007年4月に国際整合化JISの第一号として改正され,JIS Z 3221「ステンレス鋼被覆アーク溶接棒」は,2008年3月に改正された。本稿で記載した上記以外のステンレス鋼溶接材料(ソリッドワイヤ,サブマージワイヤ,肉盛用鋼帯)は2009年度中には改正公示される予定である。なお,溶接材料JISの表題には,「高張力鋼用」のように,溶接対象鋼種を主題にしたものが多いが,本稿記載のJISは,溶着金属(溶接材料)がステンレス鋼であることを示す。以下に個別JIS毎に改正内容を解説する。

 2.JIS Z 3221:2008「ステンレス鋼被覆アーク溶接棒」

2.1 適用範囲

JIS Z 3221「ステンレス鋼被覆アーク溶接棒」は,クロム11%(質量分率)以上及びニッケル37%(質量分率)以下の溶着金属を生成するステンレス鋼被覆アーク溶接棒であり,対応する下記の共存型国際規格のシステムB(共存型ISOの環太平洋規格部分)のMOD(国際規格を修正して作成した)規格である。

・ISO 3581:2003,Welding consumables - Covered electrodes for manual metal arc welding of stainless and heat-resisting steels - Classification (MOD) 

 

2.2 ISOに基づいた溶接棒の種類区分記号の付け方

JIS Z 3221:2008「ステンレス鋼被覆アーク溶接棒」の区分記号を図1に示す。ステンレス鋼被覆アーク溶接棒を表す冠詞が従来の「D」からElectrodesとStainlessに由来する「ES」に代わる以外は大きな区分記号の変更は無い。

 

2.3 製品の呼び名例

溶接棒の呼び方は,その種類,径及び長さによる。

2.4 JIS規格の変遷とAWS

ステンレス鋼被覆アーク溶接棒JISの変遷及びAWSとの対比を表1に示す。1957年に制定されて以来,改正の都度種類は追加されており,ステンレス鋼の建築分野への適用範囲の拡大に伴っての種類追加もされている。なお,2008年の国際整合化改正に当っては,表1に示すように,旧JISの種類の他に,AWS由来の種類も合わさって追加されていることがわかる。

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本稿は,日本溶接協会機関誌「溶接技術」2009年5月号に掲載されたものをもとに,
直近の動向を踏まえ一部修正しております。記述内容は2009年3月末日現在のものです。

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