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 1.はじめに

 低合金耐熱鋼用溶接材料及びサブマージ溶接用フラックスに係るISO整合化JIS改正は,まだ原案段階(2009年度及び2010年度の改正を予定)にあるが,関係各位のご理解を得ておきたく,JIS規格体系の整理とJIS改正案内容について,本稿で先行して解説することとした。現行のJISよりも機械的性質や化学成分等,詳細に規定するので,多少複雑な種類記号の組み合わせとなるが,溶接継手に必要とされる特性や使用方法も含めての種類表記となる点をご理解いただきたい。

 2.低合金耐熱鋼用溶接材料

モリブデン鋼及びクロムモリブデン鋼は,火力発電用ボイラ,石油精製,石油化学,石炭液化,石炭ガス化などの各分野で反応容器などに広く利用されている。これらの鋼種について,ISOでは「Creep-resisting steels」とし,JISでは具体的な成分で表す「モリブデン鋼及びクロムモリブデン鋼」としている。以下に品種別に規定した溶接材料について解説する。

 

2.1 被覆アーク溶接棒

2.1.1 適用範囲

JIS Z 3223「モリブデン鋼及びクロムモリブデン鋼用被覆アーク溶接棒」は,AWSを参考に1966年に制定された。以下に解説する改正は2009年度に予定しているが,それは対応する下記の共存型国際規格のシステムB(共存型ISOの環太平洋規格部分)に整合化して作成したMOD(国際規格を修正して作成した)規格である。

・ISO 3580:2004,Welding consumables - Covered electrodes for manual metal arc welding of creep-resisting steels - Classification 

 

2.1.2 ISOに基づいた溶接棒の種類区分記号の付け方

現行のJIS Z 3223:2000と改正案との溶接棒の種類の記号の付け方を対比して図1に示す。モリブデン鋼及びクロムモリブデン鋼用被覆アーク溶接棒を表す冠詞が従来の「DT」からElectrodesに由来する「E」に変更され,適用鋼種の記号に代わって溶着金属の機械的性質や化学成分の区分記号で表されることとなる。一部の種類は,JIS Z 3211の溶接のまま(AS WELDED)と同じ記号となるが,JIS Z 3223では,PWHTが必須であり,注意が必要である。

 

2.1.3 製品の呼び名例

溶接棒の呼び方は,その種類,径及び長さによる。

 

例1  E4916-1M34.0400
    溶接棒の種類 棒径 
長さ

49:溶着金属の引張強さが490MPa以上
16:被覆剤の種類が低水素系
1M3:溶着金属の化学成分
     (特徴成分・・・Mn:1.00以下,Mo:0.40〜0.65)
 

例2  E5516-1CM H55.0400
    溶接棒の種類   棒径   
長さ

55:溶着金属の引張強さが550MPa以上
16:被覆剤の種類が低水素系
1CM:溶着金属の化学成分
     (特徴成分・・・Mn:0.90以下,Cr:1.00〜1.50,Mo:0.40〜0.65)

H5:溶着金属の水素量(単位:mL/100 g)が5以下

 

2.1.4 改正予定JISの新旧対比

JIS Z 3223:2006と改正案との溶接棒の種類の記号の付け方を対比して表1に示す。改正案では,溶着金属の引張強さ,被覆剤の種類,溶着金属の化学成分が詳細に区分して規定することとしている。

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本稿は,日本溶接協会機関誌「溶接技術」2009年6月号に掲載されたものをもとに,
直近の動向を踏まえ一部修正しております。記述内容は2009年4月末日現在のものです。

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