ニッケル及びニッケル合金溶接材料は,耐食性,耐熱性,耐低温性が要求される原子力機器,化学機器,淡水化機器などに広範囲に使用されている。なお,ニッケル及びニッケル合金溶接材料に対応したISOには,JIS Z 3224,JIS Z 3334の他に,本誌1月号の表3に記述したJIS規格体系にある「9%ニッケル鋼用溶接材料:JIS Z 3225,JIS Z 3332,JIS Z 3333」も含まれているが,「9%ニッケル鋼用溶接材料JIS」では,LNGタンク用の低温性能(-196℃での衝撃性能)を特に規定して,我が国特有の事情を考慮した規定となっている。そこで,今回の国際整合化JIS改正は,「9%ニッケル鋼用溶接材料」を含めない適用範囲のニッケル及びニッケル合金について行う。
2.1
被覆アーク溶接棒
2.1.1
適用範囲
JIS Z 3224「ニッケル及びニッケル合金被覆アーク溶接棒」は,ニッケル含有量が他の成分の含有量を超える溶着金属を生成する溶接棒として1976年に制定された。以下に解説するJIS改正は2009年度に予定しているが,それは対応する下記の国際規格に整合化して作成したMOD(国際規格を修正して作成した)規格である。
・ISO 14172:2008,Welding consumables - Covered electrodes for manual metal arc welding of nickel and nickel alloys - Classification
2.1.2 ISOに基づいた溶接棒の種類区分記号の付け方
現行のJIS Z 3224:1999と改正案との溶接棒の種類の記号の付け方を対比して図1に示す。被覆アーク溶接棒を表す冠詞が従来の「D」からElectrodesに由来する「E」に代わり,溶着金属の化学成分を表す記号が続くが,JIS Z 3224:1999とは,化学成分を表す記号内容は変更となり,合わせて,参考としての化学成分表記による記号も規定される。
JIS Z 3224改正案と現行のJIS Z 3224:1999及びAWS A5.11:2005との区分記号を対比して表1に示す。
2.1.3
製品の呼び名例
溶接棒の呼び方は,その種類,径及び長さによる。

注a) 化学成分を表す記号(例:Ni 6182)に付随して,化学成分表記による記号(例:NiCr15Fe6Mn)を表示してもよい。
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