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プラント圧力設備の溶接補修

第1回 溶接補修一般

 4.プラントの構成材料と劣化損傷

4.1 構成材料

プラント設備は炭素鋼を基本として低合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅合金、チタンなど多種類の金属材料が使用される。参考として、代表的な装置について運転条件、腐食媒体および主要構成材料を表1に示す。石油プラントでは高温硫化水素、湿潤硫化水素、高温水素、ポリチオン酸などに対する劣化損傷防止についての材料選定が重要となる。化学プラントでの構成材料はプロセスにより運転条件、腐食媒体は大幅に異なるため石油プラントに比べてさらに多岐にわたる。

4.2 主な劣化損傷

損傷は化学的と物理的(機械的)に大別できる。化学的損傷は主に腐食現象に起因しており湿食と乾食に区分される。湿食には孔食、隙間腐食、応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking)などがある。乾食には酸化、窒化、浸炭などがある。高温高圧水素環境では材料中に水素原子が侵入し材料劣化や割れなどを引き起す現象が知られており、水素侵食(Hydrogen Attack)、水素助長割れ(Hydrogen Assisted Cracking)などがある。湿潤硫化水素環境では水素誘起割れ(Hydrogen Induced Cracking: HIC)、硫化物応力割れ(Sulfide Stress Cracking: SSC)などがある。機械的損傷としては疲労、熱疲労、クリープ、摩耗や過大応力による変形や延性破壊、脆性破壊などがある。

圧力容器寿命や信頼性に多大な影響を及ぼすものとして、475℃脆化、シグマ脆化、焼戻脆化などの劣化現象がある。これらの損傷にはプロセス条件(温度、圧力、流体、微量成分、流速など)、材質(種類、微量成分、熱処理/組織など)や圧力容器構造、製作方法など多くの因子が影響する。
   

 5.溶接補修について

5.1 溶接補修の位置付け

プラント設備の多くは経年劣化によって徐々に寿命を消費し、予期されなかった損傷の発生によって補修や更新が必要となることが多い。予想された経年劣化や損傷でも、許容範囲を超えると、更新あるいは補修が必要になる。劣化や損傷が検出された場合には、少なくとも次回の定期保全検査(SDM)まで問題なく運転できることが必須条件となるため、状況に応じて応急補修あるいは恒久対策が必要になる。いずれの場合にも溶接補修の必要性は高く、設備保全上重要な位置を占める。

5.2 溶接補修の特徴

プラント設備の設備タイプ、構成材料、損傷形態が多岐にわたるため、溶接補修については状況に適した方法が必要である。

溶接補修は補修場所によって工場補修と現地補修に大別される。現地補修は工場補修に比べて作業性が大幅に劣るため、品質を確保するためには綿密な計画と作業管理が重要である。考慮すべき要因としては、内部流体・スラッジ・スケールなどの除去、天候条件や作業場所、補修検討および工事期間が短いなどがある。溶接施工の観点からは、厳しい拘束条件下での溶接、経年劣化による溶接性の低下、溶接作業性の低下、予熱・直後熱・PWHTの困難さなどがあげられる。

現地溶接補修は工場での新規製作時の溶接と比較して、工期、作業環境、溶接施工上などの点で厳しくなるため、溶接補修要領の検討において留意することが重要である。

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本稿は,日本溶接協会誌「溶接技術」2010年7月号に掲載されたものです。

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