2.3 当て板・スリーブ溶接補修
当て板・スリーブ溶接補修とは、図8に示すとおり供用中に検出された局部的な欠陥部の補強のために、内径600mmの圧力設備に対しては「スリーブ」を、圧力容器のような比較的径が大きい圧力設備には「当て板」を用いた溶接補修方法である。
図8
当て板・スリーブ溶接補修方法(概念図)
本補修方法に適用される圧力、温度ならびに材質に関する条件を表1に示すが、これらはTNG-G28064)に準じ定めたものである。但し、母材板厚の上限については、適用法規や規格において溶接後熱処理を必要としない板厚の上限値である38mmとした。(オーステナイト系ステンレス鋼では炭素鋼のような熱処理は必要としないが、便宜上母材厚さの上限を炭素鋼の場合と同じ数値に設定)
表1
当て板・スリーブ溶接補修方法適用条件
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適用条件 |
設計圧力 |
20MPa以下 |
設計温度 |
350℃以下 |
材質 |
・炭素鋼(P-1材)
・オーステナイト系ステンレス鋼(P-8材) |
母材板(上限) |
38mm |
当て板あるいはスリーブをすみ肉溶接にて取付けを行う場合は、以下の項目について強度上の観点も考慮し規定した。
・ スリーブ長さ
・ 当て板あるいはスリーブと母材健全部の重なり長さ
・ 当て板あるいはスリーブの板厚
・ すみ肉溶接部ののど厚
2.4 窓形溶接補修
窓形溶接補修とは、図9のとおり供用中に検出された局部的な欠陥等の補修のために、その欠陥が発生している耐圧部材を部分的に除去し、開先加工などに関する一定の要件を満足した板材など(以下、インサートプレート)を挿入し、完全溶込み突合せ溶接にて補修する方法である。
図9
窓形溶接補修方法(概念図)
本溶接補修方法の規定はASME PCC‐2、Article 2.1 Butt-Welded Insert Plates in Pressure Componentsを参考にしたものであり、主に「インサートプレート」ならびに「インサートプレート溶接線と既設溶接線」に関する規定である。
「インサートプレート」に関しては、原則として既設材料と同等材質であり同じ公称肉厚のものを採用すべきとした。また、加工が必要な炭素鋼と低合金鋼のインサートプレートに対しては、その冷間加工率がある一定以上の値を上回る場合は、適切な熱処理が必要である。
「インサートプレート溶接線と既設溶接線」に関しては、インサートプレート溶接線と既設溶接線は原則として交差させないこととし、それらの最近接間隔を規定した。しかしながら、寸法制約上の理由などからその近接間隔が確保できなかった場合の対応として、図10のとおりグラインダによる溶接線の平滑化と非破壊試験を行い、有害な欠陥が無いことを確認することが必要である。
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注1:既設突合せ溶接線の最低100mmの範囲全てをグラインダで平滑化し内外面のMTまたはPTおよび溶接線のRTまたはUT
注2:インサートプレートの突合せ溶接線全線をグラインダで平滑化し内外面のMTまたはPTおよび溶接線のRTまたはUT
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図10
近接間隔が確保できなかった場合の対応例
また、窓形溶接補修方法では拘束が厳しい場合には溶接による割れが発生する可能性があることから、図11に示す溶接順序などの溶接施工上の留意点を示した。
図11
窓形溶接の順序(例示)
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