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プラント圧力設備の溶接補修

第3回 炭素鋼・Cr-Mo鋼の溶接補修

株式会社日本製鋼所 茅野 林造

(化学機械溶接研究委員会 圧力設備溶接補修小委員会幹事)

 1.はじめに

第3回目となる本号では、指針の第3章である「材料別溶接補修要領」のうち、炭素鋼・Cr-Mo鋼の溶接補修についてその概要を紹介する。内容としては、炭素鋼・Cr-Mo鋼の種類と特性、溶接法と溶接材料特性、標準的な溶接補修要領、溶接補修施工上の留意点、代表的な溶接補修事例を紹介する。

 2.溶接補修指針、第3章 材料別溶接補修要領

2.1 構成

第3章では、代表的な圧力設備使用材料の種類毎に材料特性、溶接法と溶接材料、標準的な溶接補修要領、溶接補修施工上の留意点について規定している。材料の種類としては炭素鋼・高張力鋼、低温用鋼、Cr-Mo鋼、ステンレス鋼、耐熱合金鋳造品、ニッケル合金・Alloy800合金、銅および銅合金、チタンおよびチタン合金、クラッド鋼と異材溶接部にわたるまで多岐におよんでいる。本号では特に炭素鋼とCr-Mo鋼を取り上げ、以下にそれらの概要を記す。

2.2 炭素鋼・Cr-Mo鋼の種類と特性

炭素鋼は炭素量により、表1のとおり分類される。圧力容器などの溶接構造物には炭素量が0.30%以下の低炭素鋼が使用され、引張強さが490MPa未満のものを軟鋼、これに熱処理や少量の合金元素の添加等によって強度を高くしたものを高張力鋼と呼ぶ。また、液化ガスの貯蔵や輸送用に開発された低温用アルミキルド鋼は低温用鋼とも呼ばれる。これらは一般構造用(SS材)、溶接構造用(SM材)、圧力容器用(SB、SPV、SLA、SGV材)等のJIS規格材であり、強度・化学成分等の要求値が近似したASME規格相当材がある。

表1 炭素量による炭素鋼の分類

分類 炭素量、% 硬さ、HB 適用例
低炭素鋼 <0.10 75-100 ガスケット
0.10-0.30 80-145

圧力容器

配管

中炭素鋼 0.30-0.50 140-200  

非溶接構造物

高炭素鋼 0.50-2.0 >200

石油精製装置等で使用されるCr-Mo低合金鋼の鋼種は表2に示すように、0.5Mo鋼から9Cr-1Mo鋼が含まれる。当該鋼種は耐熱性能のみならず、使用環境によっては、厳しい靭性値を要求されることがあり、適正な溶接材料および溶接方法の選定が重要となる。これらのCr-Mo鋼に含まれる元素は主として高温強度の向上を目的に添加されているものである。合金元素の添加による高温強度の向上は主にC、Nなどの侵入形原子による固溶強化と、炭化物による析出強化に大別される。さらに高温強度はその金属組織、結晶粒度などに依存する場合もある。そのため、鍛造、圧延、熱処理等の製造工程も高温強度を支配する重要な因子となる。低合金耐熱鋼は350〜600℃の温度範囲で使用されるものが多い。このような温度に長時間晒された場合、またはこのような温度から徐冷された場合、焼戻脆化が起こることが知られている。

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本稿は,日本溶接協会誌「溶接技術」2010年9月号に掲載されたものです。

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