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プラント圧力設備の溶接補修

第3回 炭素鋼・Cr-Mo鋼の溶接補修

2.5 補修溶接事例

(1)ノズル取付け溶接部の補修例

10年稼働の2.25Cr-1Mo鋼製直脱反応塔のクエンチノズル(4B内径)取付け溶接部に割れが検出され、補修工事を行った事例である。

〈反応塔仕様〉

 ・設計温度: 427℃       ・設計圧力: 11.4MPa
 ・シェル材質: 2.25Cr-1Mo鋼  ・シェル厚さ: 118mm
 ・オーバーレイ材質:309L系   ・オーバーレイ厚さ : 6mm

〈補修手順〉

予熱温度を150℃以上に保持しながら、内面からエアアークガウジングおよびグラインダで欠陥を除去し滑らかに仕上げ。割れ部は端部から50mmまで研削。

・欠陥除去部については母材とオーバーレイの境界をエッチングにて確認する。内面のMTおよびPTにより有害な欠陥のないことを確認。

・パネルヒータにて脱水素処理(350℃ x 2時間)。

・200℃以上の予熱を行い、母材部に対して2.25Cr-1Mo鋼被覆アーク溶接棒(E9016-B3)を用い溶接 (温度管理は接触温度計を使用)。

・母材と同一面まで溶接した後、グラインダ手入れを行い、予熱を保持したままで乾式MTにて有害な欠陥のないことを確認。

・検査後、パネルヒータにて中間PWHT(600℃から650℃ x 5時間)。

・グラインダ手入れ後、室温でUT、MTおよびPTにて有害な欠陥のないことを確認。

・予熱温度を100℃以上に保持し、D309Lのオーバーレイ溶接。

・徐冷しグラインダ手入れ後、室温でPTにてオーバーレイ面に有害な欠陥のないことを確認。

・補修部周辺のノズルを含むシェル全周に保温材を巻き、PWHT(690℃ x 8時間)。

・補修部は最小50mmRの曲率でグラインダ手入れ。

・補修部およびPWHTを受けた範囲とその周囲のシェル、ノズルの母材、溶接部、オーバーレイ面に対してMT、UTおよびPTにて有害な欠陥のないことを確認。

図7 ノズル取付け溶接部の溶接補修

(2)ボトムノズルフランジの更新事例

5年稼働の2.25Cr-1Mo鋼製直脱反応塔のボトムヘッドに取付けられている24Bノズルのガスケットリング溝部の割れがオーバーレイから母材に進展したため、フランジ部の更新工事を行った事例である。

〈反応塔仕様〉

 ・設計温度: 425℃           ・設計圧力: 14.0MPa
 ・ノズル材質: 2.25Cr-1Mo鋼       ・ノズルネック厚さ: 94mm
 ・オーバーレイ材質 : 309系+ 347系 ・オーバーレイ厚さ: 6.4mm

〈補修手順〉

・ノズル取付け溶接部の外面よりMTおよびUT、ノズル内面のPTを行い、有害な欠陥のないことを確認。

・ガス加熱で脱水素処理(350℃から400℃ x 2時間)。

・ガス加熱で予熱温度を150℃以上に保持し、ノズルネック部のガス切断。切断時、フランジが落下しないようワイヤー、チェーンブロックなどで支持。 

・既設ノズルネックの開先位置までの余肉をエアアークガウジングで落としながら開先加工。ガウジング後はグラインダにて滑らかにならし、MTで有害な欠陥のないことを確認。開先仕上げのグラインダ加工は、ガウジング肌から2mm以上研削。

・治具にて新規製作ノズルと既設ノズルの組合せを行い、仮付け溶接。

・ノズル内面よりパネルヒータにて予熱。溶接時の予熱温度は150℃以上。

・被覆アーク溶接棒(E9016-B3)を用い溶接。

・裏はつり、グラインダ手入れをし、予熱したままで乾式MTにて有害な欠陥のないことを確認した後、内側溶接。

・パネルヒータにて脱水素処理(350から400℃ x 12時間)。

・グラインダ手入れを行い、MTにて内外面に有害な欠陥のないことを確認。

・予熱温度を100℃以上に保持し、一層目D309Lの下盛り溶接。

・徐冷し、グラインダ手入れ後、室温でPTにてオーバーレイ面に有害な欠陥のないことを確認。

・予熱なしでD347Lの上盛り溶接を行い、グラインダ手入れ後、PTにてオーバーレイに有害な欠陥のないことを確認。

・新規フランジ取付け溶接部に対してUT、RTおよびMT。

・溶接補修部の内外面にヒータを取付け、フランジおよびノズルネック部に保温を施し、 厚肉シェル部も考慮してPWHT(690℃ x 8時間)。

・グラインダ手入れ後、新規フランジ取付け溶接部およびPWHTを受けた範囲のノズルの母材、溶接部に対して非破壊検査。

・補修した箇所を対象として部分耐圧試験。 

・新規フランジ取付け溶接部に対してMT、UTおよびPTを行い、ガスケット溝に対してはPTにて有害な欠陥のないことを確認。

図8 ボトムノズルフランジの取替え補修

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本稿は,日本溶接協会誌「溶接技術」2010年9月号に掲載されたものです。

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