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プラント圧力設備の溶接補修

第4回 ステンレス鋼の溶接補修

株式会社タセト 岡崎 司

(化学機械溶接研究委員会 圧力設備溶接補修小委員会幹事)

 1.はじめに

本号では、指針の第3章である「材料別溶接補修要領」のうち、ステンレス鋼の溶接補修についてその概要を紹介する。内容としては、ステンレス鋼の特性、溶接法と溶接材料特性、標準的な溶接補修要領、溶接補修施工上の留意点であり、紙幅の関係上、異材溶接や肉盛オーバーレイ、クラッド鋼については割愛するのでこれらについては指針を参照されたい。

 2.ステンレス鋼の種類と特性

図1に示すように、ステンレス鋼は化学成分と金属組織により、主成分がFe-Crのマルテンサイト系、フェライト系およびFe-Cr-Niのオーステナイト系、オーステナイト・フェライト(二相)系および析出硬化系に分類される。

図1 主成分・金属組織によるステンレス鋼の分類

2.1 マルテンサイト系ステンレス鋼

溶接部での硬化が著しく溶接のままでは曲げ延性が低く低温割れ感受性が著しく高いため、プラント圧力設備などの溶接構造物としては使用されない。

2.2 フェライト系ステンレス鋼

13Cr鋼では低炭素のSUS410L、Alを少量添加し溶接性を改良したSUS405が、18Cr鋼ではSUS430、Moを添加したSUS444などがある。フェライト系ステンレス鋼は耐高温硫化性に優れ、塩化物を含む湿潤環境で応力腐食割れを生じないのが特長である。塩化物を含む湿潤環境には耐孔食性の観点からMoを含有した高純度フェライト系ステンレス鋼の使用が有効である。

2.3 オーステナイト系ステンレス鋼

オーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼としては、18-8系のSUS304、Moを添加したSUS316などがある。耐食性、機械的性質、溶接性などに優れるため化学装置用材料として使用されている。

2.4 オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼

オーステナイト系ステンレス鋼のNiを低下させ、MoおよびNを添加したフェライト相とオーステナイト相を有する鋼で一般には二相ステンレス鋼と呼ばれる。大きく22Cr鋼と25Cr鋼に分けられる。

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本稿は,日本溶接協会誌「溶接技術」2010年10月号に掲載されたものです。

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