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プラント圧力設備の溶接補修

第6回 溶接補修に関する国内外の法規・規格

ロイド・レジスター・ジャパン(有) 平井 征夫

(化学機械溶接研究委員会 圧力設備溶接補修小委員会幹事)

 1.はじめに

第1回から第5回にわたり、「プラント圧力設備溶接補修指針」1)の概要を紹介したが、最後となる今回は、溶接補修に関する国内外の法規・規格の現状について述べる。

石油精製・石油化学プラントの多くは1970年代に建設され、高齢化から余寿命評価を含めた設備保全技術がますます重要になって来ている。従来1年毎のSDM検査が最大4年まで延長が可能となった。一方、損傷部についての合否判定は設計規格をベースに実施されてきたが、近年破壊力学的手法等による合理的な評価法が開発され、欧米を中心として維持規格化が進められている。維持規格は検査・評価及び補修の三本柱で構成される。供用適性評価 (Fitness for Service:FFS評価)やRBI(Risk Based Inspection)については国内外において規格化は進んでいるが、補修について規格はやや遅れているのが実情である。

 2.我国における供用中圧力設備の補修に関する法令1)

2.1 法令の体系

プラント圧力設備は法規に基づき設計・製作され、保全管理によって健全性が維持される。しかし、定期検査時に局部減肉等の欠陥が検出される場合があり、溶接肉盛補修等が必要になる。図1に圧力設備に関する代表的な法令を示すが、関係省庁及び強制法規によって規定が異なっている。また、補修工事に対する事前申請・許可の要否は法令によって異なり、溶接補修について明文化されたものは少ない。

図1 国内法規・規格体系と溶接補修

1) 労働安全衛生法

補修工事では、2通りの所轄労働基準監督署への申請フローがある。腐食減肉などの軽微な補修等は変更届を行い、補修工事後に変更検査を受ける。最小許容厚さを割る損傷部で、溶接肉盛範囲が広くなる場合、損傷原因及び補修方法を所轄労働基準監督署に説明し、指導・了解を得る。溶接補修で変更届を要する場合、変更届は変更工事開始日の30日前までに提出する。但し、変更届けは、軽微なきずの肉盛溶接に限定される。

一方、大規模な変更(胴の1/3以上の改造、鏡板・管板の取替等)は当該機器の廃止届けを行い、新作機器を製作する場合と同様に製造許可、溶接・構造検査を受ける。

2) 高圧ガス保安法

高圧ガス製造設備等の溶接補修工事は、事前許可が必要な場合と完成後の届出(軽微な変更)に分かれる。変更許可申請(着工1ヶ月前)の要否は所轄県により解釈の相違があり、県との事前相談が基本である(表1)。変更許可申請が必要な場合の例として、事故発生に基づく補修工事、県高圧ガス貯槽開放検査周期延長評価実施要領やKHK保安検査実施要領によらない補修工事、設備の運転中の環境を勘案して必要な対策を講じることが必要と判断される工事等がある。

表1 高圧ガス製造設備等の溶接補修工事

製造者区分 工事内容 許可の区分
第一種製造者 軽微な変更工事 届出(完成後)
軽微な変更工事以外 許可(事前)

  ●軽微な変更工事の内容:一般高圧ガス保安規則15条に規定
  ●変更許可申請工事、軽微な変更工事:設置者と県との事前相談

なお、「高圧ガス設備の耐圧試験適用除外期間延長に関する評価確認要領」において、軽微な溶接補修は次のように定義されている(表2参照)。

表2  欠陥の箇所、大きさと点数(6点法)

軽微な溶接補修;欠陥をグラインダー加工で措置し溶接修理したものであって、製造細目告示第16条第3項の表1欠陥の箇所欄に掲げる区分ごとに同表グラインダー加工等による仕上がりの深さ欄に掲げる区分に応じ同表点数欄に掲げる点数に、同項の表2欠陥の長さ又は長径欄に掲げる区分に応じ同表点数欄に掲げる点数を乗じて得た点数の和が6点以下である欠陥の補修をいう。

これらの規定については技術根拠に乏しく、経験的に決定されたものであり、最近の技術的進歩を考慮して見直し改定が望まれる。

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本稿は,日本溶接協会誌「溶接技術」2010年12月号に掲載されたものです。

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