供用中圧力設備については、一般に定期検査(設備診断)を行うことが義務付けられている。国内では、きずの合否判定は設計規格が適用される場合が多いが、1990年代から、構造物のFFS評価を合理的に行う維持規格の必要性が世界的に高まり、各種の維持規格が制定されている2〜7)(図2)。
図2 設備診断と溶接補修
図3に世界の破壊力学的評価法の動向を示す。1970年頃から線形破壊力学等による安全性評価法の研究が始まり、原子力分野ではNRL NDTアプローチによる評価法がASME Codeに採用された。その後、KIR、FAD概念を導入して、現在のASME Sec.XIとして世界中で実用されている7)。我国の原子力分野に関しては、2003年に機械学会維持規格JSME S NA1(評価編)が法規に引用され、わが国で初めて小さな欠陥を許容する維持規格として実用化された2)。
図3 破壊力学的評価法の開発経緯
代表的な維持規格には以下のものがある。
1)検査規格
米国:ASME/API 580/581(RBI)、API 510他
欧州:EPERC/RIMAP(RBI)
日本:JSME S-NAI(検査編)、HPI/RBM研究会規格,
2)FFS評価規格
(原子力)ASME Sec. XI、JSME S-NAI(評価編)、R6
(非原子力)API 579/ASME-FFS、FITNET、HPIS Z101
3)補修規格
(原子力)ASME Sec.XI、JSME S-NAI(補修編)、
(非原子力)NBIC NB23、ASME PCC-2、JPI 8R-16
表3に我国の代表的なFFS規格を示す。茨城県高圧ガス施設に対してFFS評価基準(外面腐食)が運用されていることが注目される。また、JSME S NAI(評価編、検査編)は既に法規に取込まれている。一方、非原子力分野においても民間規格は制定されているが、法規への取込が遅れている。高圧ガス保安法関連設備に関しては、高圧ガス保安協会に法規への取込を目的とした活動が始まっており、その成果が期待される。
表3 国内圧力設備のFFS規格
団体 |
維持規格(FFS評価) |
石油学会 |
JPI-8S-1配管維持規格
JPI-8S-2設備維持規格
JPI-8R-12劣化損傷の評価と対応 |
HPIS |
HPIS Z 101圧力機器の亀裂状欠陥評価方法 |
石油連盟 |
供用適性評価ハンドブック(減肉) |
日本機械学会 |
JSME S NA1発電用原子力発電設備維持規格 |
日本溶接協会 |
WES 2805溶接継手の脆性破壊発生及び
疲労き裂進展に対する欠陥の評価方法 |
茨城県高圧ガス |
保安協会 茨城県供用適性評価基準(外面腐食) |
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