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 1.はじめに

溶接材料に関する国際規格(ISO)の制定・改正は,IIW(International Institute of Welding)およびISO/TC44(溶接)/SC3(溶接材料)で審議しており,我が国では,国内審議団体である(社)日本溶接協会の溶接棒部会が担当して推進している。 ISOに整合したJIS改正も(社)日本溶接協会の溶接棒部会が担当して実施しており,個々のJIS改正内容については,最新技術情報「溶接材料JISの改正内容の解説」第1回から第7回までの連載にて紹介されている。

溶接技術全てに関わる安全衛生は,溶接作業において重要な技術および技能であり,近年の環境問題への関心の高まりから,溶接作業中に発生する溶接ヒュームについても注目されている。

本稿では,溶接材料の溶接工程において発生する溶接ヒュームに関する報告書形式を定めた,「JIS Z 3940」 溶接ヒュームのデータシートの具体的な制定内容(2010年2月22日公示)について解説する。

 2.JIS Z 3940制定の趣旨

近年,環境問題についての関心は益々高まっており, 2004年のIIW大阪年次大会 第[委員会では,ヒューム中の元素及び化合物の規定が各国で引き下げられたことが報告された。さらに,溶接関連企業に対して溶接ヒューム中のMnなどの特定元素及び化合物を低減することなどの声明が発表されている。

我が国においても,溶接時に発生する溶接ヒュームは労働衛生上の観点から重視されており,1979年にJIS Z 3930(被覆アーク溶接棒の全ヒューム量測定方法)が制定され,2001年には,ガスシールドアーク溶接にも適用できるように内容の見直しを行い,名称も“アーク溶接のヒューム発生量測定方法”に改称されている。

一方,2006年にはISO 15011-4(Health and safety in welding and allied processes−Laboratory method for sampling fume and gases−Part 4: Fume data sheets)(初版)が制定され,溶接ヒューム発生量及びその主要成分を記載する溶接ヒュームのデータシートの様式が制定された。現在,日本ではこれに該当する規格がなく,溶接ヒュームに関する情報を提供する規格の重要性が認識されたため,ISO 15011-4を忠実に翻訳し,これに準拠したJIS規格を制定するに至った。国際規格との整合化を図ることにより,溶接ヒュームに関する情報を提供するとともに,貿易の円滑化に寄与できることが期待される。

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本稿は,日本溶接協会機関誌「溶接技術」2010年7月号に掲載されたものをもとに,
直近の動向を踏まえ一部修正しております。記述内容は2010年6月末日現在のものです。

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