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6.3 溶接の試験条件

溶接試験条件は,溶接材料の種類毎に規定した。各溶接材料の溶接試験条件を表3〜表5に示す。 ISO 15011-4では,溶接電流は製造業者が推奨する電流範囲の最大電流の90%と規定している。JIS規格制定に当たり,実情に合っていないとの意見も出されていたが,議論の結果,@実際に使用される可能性のある最大電流で発生するヒュームに関する情報を提供するISO規格と整合が取れない,AISO規格と異なる溶接電流を規定した場合,ISO規格とJIS規格の2種類のデータシートを作成しなければならないなどの理由から,ISO規格に規定されている溶接電流を採用することで合意を得て,本JIS規格となった。


表3 被覆アーク溶接の試験条件
項目 試験条件
溶接電流 製造業者が推奨する溶接電流範囲の最大値の90%の値とする。
アーク電圧 熟練した溶接技能者が設定する適正作業条件(例えばアーク長)を使用し,アーク電圧を記録する。
測定方法は,溶接棒ホルダに測定機器の導線の一端を取り付け,もう一方の導線の端を試験体又はその近傍に取り付け,アーク電圧を測定する。
極性 製造業者が推奨する極性とする。また,複数の極性が推奨されている場合は,通常に使用する極性とする。


表4 ガスシールドアーク溶接の試験条件
項目 試験条件
ガスの種類 製造業者の推奨するガスを用いる。ただし,複数のガスが推奨されている場合は,次の式で最大値が得られる酸化性(oxidising mixture)の混合ガスを用いる。
 1×CO2(体積分率)+2×O2(体積分率)
ガス流量 適切なシールドが得られるガス流量とする。
 (ガス流量は,一般的には15〜25 L/min
チップ母材間距,
ワイヤ送給速度
及び溶接電流
チップ母材間距離は,表6の値が望ましい。溶接電流は,供試ワイヤの径に対して製造業者が推奨する溶接電流範囲の最大値の90%の値とする。
なお,ワイヤ送給速度を記録する。
アーク電圧 製造業者が推奨する範囲内で,熟練した溶接技能者が設定する適正アーク電圧とする。測定方法は,測定機器の導線の一端をコンタクトチップ近傍に取り付け,もう一方の導線の端を試験体又はその近傍に取り付け,アーク電圧を測定する。
極性 製造業者が推奨する極性とする。また,複数の極性が推奨されている場合は,通常に使用する極性とする。


表5 セルフシールドアーク溶接の試験条件
項目 試験条件
チップ母材間距離,
ワイヤ送給速度
及び溶接電流
チップ母材間距離は,製造業者が推奨する距離とする。溶接電流は,供試ワイヤの径に対して製造業者が推奨する溶接電流範囲の最大値の90%の値とする。
なお,ワイヤ送給速度を記録する。
アーク電圧 熟練した溶接技能者が設定するスムーズな溶滴移行が得られる最小アーク電圧とする。測定方法は,測定機器の導線の一端をコンタクトチップの近傍に取り付け,もう一方の導線の端を試験体又はその近傍に取り付け,アーク電圧を測定する。
極性 製造業者が推奨する極性とする。また,複数の極性が推奨されている場合は,通常に使用する極性とする。


  表6 チップ母材間距離の推奨値 単位 mm
ワイヤ径 チップ母材間距離
ソリッドワイヤa) フラックス入りワイヤb)
0.6 8
0.8 10
0.9 15
1.0 15 18
1.2 18 20
1.4 22
1.6 22 25
2.0 26 28
2.4 28 30
a) 他の径のチップ母材間距離は内挿法で求めることができる。
 b) 他の径のチップ母材間距離は内挿法又は外挿法で求めることができる。

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本稿は,日本溶接協会機関誌「溶接技術」2010年7月号に掲載されたものをもとに,
直近の動向を踏まえ一部修正しております。記述内容は2010年6月末日現在のものです。

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