WE-COM 最新号トップへ(WE-COM会員のみ) | この号のトップへ | WE-COM バックナンバートップへ

第3回

相談例7.インコネルの拡散接合

インコネルの拡散接合とはどのような接合方法かご教示願います。

回 答

「拡散接合」とは、図1に示すように、接合する材料同士を密着させ、真空中あるいは不活性ガス雰囲気中で母材の融点以下の温度に加熱し、できるだけ塑性変形を生じない程度に加圧して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法です。拡散接合は、「材料的に溶融溶接が困難な材料の接合」、「異種金属・異種材料の接合」あるいは「変形が少ない部品の組立接合」などに用いられています。

拡散接合は固相拡散接合と液相拡散接合に大別され、固相拡散接合には箔やめっきなどのインサート材を用いるものと用いないものがあります。液相拡散接合では、母材より低融点の箔や粉末などをインサート材とし、インサート材を溶融して一時的に液相を生じさせ、それを等温凝固させることによって母材を接合します。インコネルなどのNi基合金の接合では、高温強度が高くクリープ変形しにくく、接合面の密着化が難しいため、一般にインサート材を用いる方法が採用されます。また、インサート材を用いた接合では、室温で母材なみの強度を示しても、高温での破断寿命が短く、接合部で破断するなどの問題を生じることもあるので、液相拡散溶接を用いることが多いようです。

液相拡散接合は、本来、ニッケル基あるいはコバルト基耐熱合金の接合方法として開発されたもので、インサート材には、①母材より融点が低いこと、②母材に対するぬれ性が良好なこと、③空隙などの接合欠陥を生じないこと、④接合温度では短時間で等温凝固すること、⑤接合部と母材の均質化が短時間で行えること、⑥適度に母材表面を溶融し酸化被膜などを破壊できること、⑦じん性低下の原因となる有害相を形成しないこと、などが要求されます。そのためニッケル基合金の拡散接合には、ニッケルにB(ホウ素)、Si(ケイ素)、P(リン)などの融点低下元素を添加した合金がインサート材として用いられています。

拡散接合装置の一例を示すと図2であり、接合部の加熱には「誘導加熱方式」や「抵抗加熱方式」が多用されています。なお、液相拡散接合ではインサート材の組成、とりわけ融点が重要です。やや特殊な例かもしれませんが、インコネル718のインサート材についての検討結果が「溶接学会論文集,第24巻,第3号, p.273:均一化熱処理省略を目的としたNi基超合金Inconel718の液相拡散接合プロセスの開発」として報告されています。

図1 拡散接合の原理

図2 拡散接合装置の一例


(WE-COM会員のみ)