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極低スパッタ炭酸ガスアーク溶接技術
“J-STAR® Welding”について

4. 正極性(ワイヤマイナス)におけるアーク安定化

FeおよびFeOよりも仕事関数の低い元素は陰極点を形成し易く、沸点が高い元素は陰極点を安定化させ易いと考えられる。REM(希土類金属、Ce,La,Y)はその酸化物を含めて仕事関数が低く、沸点が高い。以上のことから正極性溶接(ワイヤマイナス)におけるアーク安定化のための添加元素としてREMを選択した。図4に溶接電流300Aにおける電極ワイヤREM量と移行溶滴径およびワイヤ溶融速度の関係を示す。逆極性(ワイヤプラス)における移行溶滴径の平均は2.2〜2.4mmであり、電極ワイヤのREM含有量による明確な傾向は認められなかった。一方、正極性溶接(ワイヤマイナス)における移行溶滴径の平均は電極ワイヤREM量0.02mass%以下が2.9〜3.2mmであったのに対して、REM量0.03〜0.04mass%では1.1〜1.2mmにまで低減した。

図5に正極性溶接(ワイヤマイナス)における溶滴とアークの高速度撮影画像を示す。また、アーク電圧の時間的変化を下段に示した。 REMを添加していないワイヤのアーク点(陰極)は大きく偏向するのに対して、REMを添加したワイヤではワイヤ先端にアークが集中し、偏向のない安定したアークが観察された。正極性溶接(ワイヤマイナス)においては、REM添加ワイヤを用いることが非常に有効であるといえる。

図4 ワイヤ溶融速度と溶滴径へのREM量の影響

ワイヤへのREM添加なし
 

ワイヤのREM量310ppm
J-STAR® Welding

図5 アーク現象の高速度ビデオ観察


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