5. J-STAR® Weldingの特性
開発技術“J-STAR Welding”は前述したように、REM(Rare Earth Metal)を添加したワイヤを用い、従来とは異なる正極性溶接(ワイヤマイナス)を採用した点に特徴がある。そのアーク現象は、ワイヤ先端を頂点とする安定した円錐状アークを形成し、最も理想的な溶滴移行と考えられる微細スプレー移行を炭酸ガスアーク溶接において初めて実現した。
表1に溶滴の大きさと移行回数を示す。従来法(逆極性:ワイヤプラス)の溶滴は直径2.4mm、重量は59mg、移行回数は27回/秒、この一般に実用されているワイヤで正極性(ワイヤマイナス)とした場合、溶滴は直径3.3mm、重量は147mgへと粗大化し、移行回数は15回/秒に減少した。しかし、正極性溶接(ワイヤマイナス)においてREM添加ワイヤを用いる開発技術“J-STAR Welding”の溶滴は直径1.2mm、重量は7mgへと微細化した。また、溶適移行回数は222回/秒に増加しており、連続的かつ規則的な溶滴移行を実現している。
表1 極性とワイヤの組み合わせによる溶滴径と溶滴移行回数
J-STAR Weldingの特徴を以下に列挙する。
(1) スパッタ発生量が従来の1/10に低減される。(2) 溶接ビード近傍のスパッタ付着が極めて少ない。
(3) ヒューム発生量が従来の1/2に低減される。
(4) 溶込み深さは従来の1.5倍に増加する。
(5) アーク音がソフト、音圧は従来の1/2に低減する。
図6に従来溶接とJ-STAR Weldingの溶接の状況を示す。図7に溶接電流とスパッタ発生量の関係を示す。開発技術は、従来技術と比較して大幅なスパッタ低減が達成されており、その効果は溶接電流250〜400Aの広い範囲で著しい。
従来溶接 |
J-STAR® Welding |
図6 溶接の状況(通常ビデオ1/5スロー再生)
図7 溶接電流とスパッタ発生量の関係