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“J-STAR® Welding”について

6. 高能率狭開先溶接技術の開発と今後の展開

狭開先溶接は、開先断面積の低減と溶接施工時間の短縮が可能であるが、安定した溶込み確保および積層溶接における開先面へのスパッタ付着防止が重要となる。この課題を解決する方法として、電流波形制御あるいはシールドガス組成制御が有効との報告がなされている。J-STAR Weldingはスパッタの発生が少なくアークの集中と安定性に優れることから、これら制御機構を用いることなく狭開先の溶接が可能である。図10にJ-STAR Weldingを狭開先溶接に適用した継手を示す。板厚22mm,無開先(I形)‐Gap5mmの極狭開先の溶接であるにもかかわらず溶接欠陥のない良好なマクロ組織を得ている。

このJ-STAR Weldingを用いた狭開先溶接法は、財団法人日本建築総合試験所の建築技術性能証明を平成19年5月に取得しており、溶接施工能率の向上の点から建築鉄骨分野への適用拡大が期待される。J-STAR Weldingは、既存のガスシールドアーク溶接設備を使用することが可能である。よって、実用化において新たな設備投資を必要としない。J-STAR溶接用ワイヤは、490N/mm2級鋼用、高強度な540N/mm2級鋼用および590N/mm2級鋼用を開発している。既に、橋梁、造船分野において狭開先溶接が可能な点が評価され、重要物件に採用されており、今後は、能率向上・コスト低減要求に加えて、環境意識の高まりと省エネルギーの指向によりその適用は着実に増加すると考えている。

図10 J-STAR® Weldingを用いた狭開先溶接部の断面マクロ組織

<略歴>

片 岡 時 彦

鉄鋼短期大学(現 産業技術短期大学)鉄鋼工学科卒業
1981 年 川崎製鉄(株)(現 JFEスチール(株))入社
JFEスチール(株) スチール研究所 接合・強度研究部 主任研究員
現在に至る


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