相談例10.抵抗溶接のポロシティ
板厚1mm程度の板を3枚重ねて抵抗スポット溶接する際、ナゲット内部にブローホールが発生します。ブローホールはどのようなメカニズムで発生するのでしょうか。またその防止対策にはどのようなものがありますか。
回 答
溶接部の欠陥は通常溶接継手の強さ低下を招き有害ですが、抵抗スポット溶接でのナゲット中心部付近のブローホールは、適正なナゲット径が確保されていれば、溶接継手の強さ低下にそれほどつながらないと考えられています。
そのせいもあってか、ブローホールの発生メカニズムやその対策について言及した研究報告類はほとんど見当たりません。また「JIS Z 3140-1989 : スポット溶接部の検査方法」では、“溶接内部から表面に達する割れ”、 “直径1.5mm以上の大きさのピット”および“中散りによって生じるとくに過大なくぼみ”について規定されていますが、この他のものについては有害な欠陥として規定されていません。
このように、ブローホール発生メカニズムの詳細などについてはよく分かっていませんので、溶接現場では「高張力鋼板のブローホールは対策が無いらしい」、「強度に問題が無いので、そのまま使用している」と言った話もよく耳にします。
なお一般的な事項としてですが、ブローホール発生メカニズムおよび要因・対策に関しては、次のようなことが知られています。
(1) ブローホール発生のメカニズム
抵抗スポット溶接では通電、加熱中の溶融部にガスが発生することがあります。しかし、通電停止後の冷却開始から凝固に至るまでの間、中心部に十分な加圧が加えられていれば、発生したガスはナゲット部に吸収されて消滅します。一方溶融部が凝固した後にナゲット部に残ったガスが、ブローホールとなって、溶接部の内部欠陥となります。
(2) 発生要因
ブローホールの発生要因としては、次のような因子があげられます。
(3) 対策
ブローホールの防止対策としては、次のような事項があげられます。