一方、タングステン電極の表面温度を測定するため、図3に示す高速度二色放射温度計測システムを用いた。対物レンズから入射した高温物体の熱放射光を小型の市販画像分光器によって2分割し、それぞれが異なる2つの波長の干渉フィルター(中心波長950 nm、980 nm、共に波長分解能6 ナノメートル)を通過して、1つの高速度デジタルビデオカメラ(同上)の素子表面で結像して録画される。高速度デジタルビデオカメラで撮影された2波長の画像データの相対強度比から、プランクの放射則に従い温度データが導かれる。
図3 高速度二色放射温度計測システムの外観
なお、溶接電源はインバータ制御式ティグ溶接機を用いた。陰極には直径3.2ミリメートルのランタナ入りタングステン電極(先端角60度)を用い、陽極には母材としてステンレス鋼SUS304(化学組成wt%; C:0.07, Si:0.3, Mn:0.86, P:0.03, Ni:8.2, Cr:18.2, Fe:Bal.)、または純鉄を使用した。また、シールドガスは純ヘリウムとし、アーク長は3 ミリメートル一定として20秒間のティグのスポット溶接を行った。
3. 金属蒸気挙動の可視化
それでは、早速、高速度イメージ分光システムによる可視化の結果を動画で見ていただきたい。ステンレス鋼のティグ溶接を行った場合のヘリウム(He I: 587.6 nm)、鉄(Fe I: 538.3 nm)、クロム(Cr I: 520.8 nm)、マンガン(Mn I: 476.2 nm)の各元素(原子)の線スペクトルイメージである。
動画1 ステンレス鋼のティグ溶接を行った場合の
ヘリウム(He I)、鉄(Fe I)、クロム(Cr I)、マンガン(Mn I)の
各原子の線スペクトルイメージ