2. 高張力鋼板の抵抗スポット溶接における継手強度
2.1 継手の引張せん断強さ
高張力鋼板の実用性の判定にあたっては抵抗スポット溶接継手の強度が重要な尺度であり、今までに、溶接条件、鋼板の成分・板厚の影響ならびに継手強度などについて多くの検討がなされている1)〜5)。ここでは、引張強さ270〜1370MPaの薄鋼板を対象として、鋼板成分、板厚、ナゲット径などをパラメータにした継手強度推定式を従来知見を基にして整理し、新たに提案している破断形態を考慮した継手強度推定式6)を示す。
図1に、板厚1.2mm鋼板を用いて作製した溶接継手の引張せん断強さと母材引張強さとの関係を示す。

図1 鋼板引張強さと継手の引張せん断強さの関係
継手の引張せん断強さは、母材引張強さの増加とともにほぼ直線的に増加することがわかる。なお、破断形態は、引張強さによらず全て母材破断であった。引張せん断強さ(TSS)の推定式については、多くの推定式が提案されており、Heuschkel1)、Sawill2) 及び田中ら3)の式が知られている。
TSS=F×t×TS×ND ・・・ (1) 1)
TSS=36.4×t1.42×TS0.84 ・・・ (2) 3)
ここで、F:補正係数、t:板厚(mm)、TS:母材の引張強さ(MPa)、ND:ナゲット径(mm)である。また、樺澤ら5)は、継手の引張せん断強さの推定精度を高めるために鋼板の伸びEL(%)を考慮した推定式TSS(N)を提案しているが、これらの推定式は、いずれも母材破断を前提としたものである。
TSS(N)=2.05×t×TS×(1+0.0059EL)×(ND+2.09) ・・・ (3)
一方、ナゲット径が小さい場合には破断モードは母材破断から剥離破断に移行する。剥離破断の場合は、ナゲット部にせん断応力が作用してナゲット中央部で分離するため、継手の引張せん断強さTSS(N)は下式(4)で示すようにナゲットの面積π(ND/2)2とせん断強さτw(MPa)の積で求められる。
TSS(N)=π(ND/2)2×τw ・・・ (4)
ここで、ナゲットのせん断強さτwと引張強さTSwはτw=TSw/30.5の関係にあり、またナゲットの引張強さTSwとビッカ-ス硬さHvwがTSw=9.8Hvw/3の関係にあると仮定すると、式(4)は式(5)のように書き換えられる。
TSS(N)=9.8π(ND/2)2×Hvw/31.5 ・・・ (5)
ナゲットの硬さHvwを規定する炭素当量式は種々提案されているが、式(6)が実験値とよく一致する6)。抵抗スポット溶接用炭素当量式は、抵抗スポット溶接の冷却速度がアーク溶接に比べて著しく速いため、Si、Mn、Crなどの焼入れ促進元素の寄与度がCに比較して低いのが特徴とされている。
Hvw=270+1100(C+Si/40+Mn/200+Cr/300) ・・・ (6)







