3.2 高板厚比板組みに適した溶接プロセス
図8に加圧力制御を利用した三枚重ね溶接プロセスの模式図を示す。一段目は、低加圧力・短時間通電・高電流とすることで薄板−厚板間にナゲットを確実に形成させ、二段目は、高加圧力・長時間通電とすることで厚板−厚板間でナゲットを形成させる、「2段加圧・2段通電」のプロセスである。

図8 三枚重ね溶接のための電流・加圧力制御方法及び新溶接プロセスの模式図
この溶接プロセスにおける溶融部形成現象について、高速度ビデオカメラを用いて通電中の溶融挙動の直接観察した動画及び静止画を図9および図10に示す。(a)が加圧力一定の溶接、(b)が2段加圧・2段通電の溶接である。(a)では、通電時間30cyclesで溶接したが、厚板中での発熱が先行しており、8cyclesではやや下側から溶融が始まっている。12cyclesではほぼ中央部に溶融部が形成されている。また、溶融部はかなり大きくなったにもかかわらず、薄板−厚板間までは溶融部は成長していない。(b)では、一段目の通電時間を3cycles、二段目の通電時間を25cyclesとして溶接しており、一段目(通電前期)の低加圧力・短時間通電・高電流の条件では、2cyclesで溶融が始まり、3cyclesでは厚板−厚板間での溶融がみられないが、薄板−厚板間では大きな溶融部が形成されている。2段目(通電後期)の高加圧力・長時間通電のステージでは、まず薄板−厚板間の溶融部が凝固し、その後、発熱領域が薄板−厚板間間から厚板−厚板間へと移動していく様子が明瞭に観察されている。
図9 高速度ビデオによる三枚重ね抵抗スポット溶接での
溶融部形成現象観察結果(動画)

図10 高速度ビデオによる三枚重ね抵抗スポット溶接での
溶融部形成現象観察結果(静止画)
次に、板厚0.7mmの軟鋼GA及び板厚2.3mmの780MPa級高張力鋼板GAを用い、0.7mm+2.3mm+2.3mmの三枚重ね板組み(板厚比7.6)での2段加圧・2段通電の溶接特性を実際の溶接にて検討した。一段目条件は、加圧力0.5kN、通電時間5cycles、溶接電流9kA、二段目条件は、加圧力3.0kN、通電時間20cycles、溶接電流6〜9kAである。図11に、第2溶接電流I2を横軸にとった場合の抵抗スポット溶接特性及び溶接部断面マクロを示す。加圧力一定の溶接においては、散りの無い条件では薄板−厚板間で4√tのナゲット径が得られないが、2段加圧・2段通電の溶接では薄板−厚板間で十分なナゲット径が得られた。断面マクロから、特に、第2電流が6kA及び7kAと比較的低い場合に、薄板−厚板間で形成されたナゲットが明瞭に確認された。その結果、得られた適正電流範囲は2.5kA程度とかなり広い範囲が確保されており、本技術が適正電流範囲の拡大に有効であることが明らかである。

図11 2段加圧・2段通電の溶接による三枚重ね抵抗スポット溶接特性
(板組み:0.7mmt+2.3mmt+2.3mmt,板厚比7.6)








