4. 高張力鋼板用抵抗スポット溶接技術
次に、高張力鋼板の二枚重ね抵抗スポット溶接部の継手強度向上技術について紹介する。図12は、板厚1.6mmの引張強さ590〜1180MPa級鋼板の二枚重ね継手における引張せん断強さ及び十字引張強さを、図13は十字引張試験時の破断形態の一例を示す。引張せん断強さは鋼板引張強さとともに増加する傾向にあるが、鋼板引張強さが980MPa以上では十字引張強さは逆に低下する傾向にあることがわかる。十字引張試験においては、590MPa級鋼板は母材又は熱影響部で延性的に破断するプラグ破断であるのに対し、980MPa級以上の鋼板ではナゲット(溶接凝固部)でぜい性的に破断する界面破断を示しており、継手強度低下の原因となっている。

図12 鋼板引張強さと引張せん断強さ
及び十字引張強さの関係(板厚1.6mm)

図13 十字引張試験後の代表的な破断形態
高張力鋼板で界面破断が生じる要因としては、十字引張試験時のナゲット端部での応力集中増大、及びナゲット内でのP偏析の影響が指摘されており13)、十字引張強さの低下を解決する方法としてテンパー通電法が提案されている14)。通常、抵抗スポット溶接によって得られるナゲットは硬いマルテンサイト組織となるが、得られたナゲットに後通電(テンパー通電)することでマルテンサイト組織を焼き戻しするという方法である。しかし、テンパー通電法では、ナゲットが軟化するために継手の引張せん断強さが低下するという問題があり、加えて、十分な焼き戻し効果を得るためには再通電前の冷却時間が1s程度必要になること、また、ナゲット径が小さくなるとテンパー電流で再溶融が生じるため焼き戻し効果が得られないという施工性の課題もあった。
そこで、テンパー通電法よりも短時間で高張力鋼板の抵抗スポット溶接継手の十字引張強さを向上させ、かつ引張せん断強さの低下が生じない溶接法として、短時間・高電流通電(パルス通電)による発熱を活用した抵抗スポット溶接技術15)を開発した。以下、本開発技術について紹介する。







