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自動車ボディ用高張力鋼板の抵抗スポット溶接技術
〜継手強度特性と最新溶接技術開発の動向〜

4.2 パルス通電活用溶接プロセスにおける継手強度向上機構

上述した短時間・高電流通電(パルス通電)によるナゲット周辺での優先的発熱現象を活用して、テンパー通電よりも短い時間で継手強度向上を可能とする抵抗スポット溶接技術を開発した。図17に新溶接プロセスの溶接電流パターンを示す。ナゲットを形成する本通電の後に、冷却と短時間・高電流のパルス通電を2回繰り返す溶接電流パターンとすることで、本通電で得られたナゲットを効率的に短時間再加熱することを可能にしている。

図17 パルス通電活用スポット溶接の溶接電流パターン

パルス通電活用スポット溶接の効果を板厚1.6mmの1180MPa級高張力鋼板の二枚重ね溶接で検討した。溶接条件は、本通電を電流5.5kA、通電時間14cycles、パルス通電を電流9kA、通電時間3cycles、冷却時間8cyclesとし、加圧力は3.5kNとした。図18に、ナゲット端部におけるPの偏析状態を確認するために実施したEPMAマッピングの結果を示す。パルス通電活用スポット溶接では従来溶接の場合と比較してP偏析が軽減されており、パルス通電時の再加熱によってナゲット内のPが拡散したためと推定される。また、この差異がエッチング状態の濃淡差を生じさせたものと考えられる。

図18 ナゲット端部でのPのEPMAマッピング結果

次に、溶接部の硬さ分布を比較した結果を図19に示す。両溶接方法とも同様な硬さ分布を示しているが、パルス通電活用スポット溶接では、従来溶接と比較して、母材マルテンサイト組織の焼き戻しによって生じる溶接熱影響部での軟化領域が拡大する傾向が確認された。パルス通電活用スポット溶接では、溶接熱影響部が焼き戻しされ易い状態にあったためと考えられる。一方、ナゲット硬さはほとんど低下していなかった。

図19 従来溶接とパルス通電活用スポット溶接の溶接部硬さ分布

以上の結果より、パルス通電活用スポット溶接は、①ナゲットのP偏析軽減によるナゲットじん性向上、②熱影響域拡大によるナゲット端部での応力集中緩和、の二つの効果による継手強度の向上が期待される溶接方法であるといえる。


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