株式会社 東 芝
電力システム社 京浜事業所
浅 井 知
1. はじめに
工場におけるものづくりでは、品質は当然のことながら生産性が重要である。いかに 安く、早く、いいものを作るかを目標に施策がたてられ、日々改善がはかられている。生産工程の一つである溶接作業においても、いかにかける労力を少なくし、低コスト化を実現できるように、効率向上に取り組んでいる。ここでは、工場溶接の高効率化として、弊社重電機器の溶接を例に、その取り組みを紹介する。
2. 重電機器の溶接の特徴
主な重電機器としては、火力、水力、原子力発電プラント機器があり、それらを構成する蒸気タービンや発電機、水車、原子炉炉内構造物、熱交換器、配管などがあげられる。また、開発機器として、近年注目されているITER(国際熱核融合炉)を代表とする核融合機器や加速器、さらに医療機器である重粒子線治療装置なども対象となる。図1に、代表的な機器を示すが、大きさは、長さ10mをこえ、重量も数百トンを超える大型溶接構造物である。
これらに使用される材料は、火力発電プラント機器では、高温で使用されることから、炭素鋼から低合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル基合金、コバルト基合金と多岐にわたる。一方、原子力発電プラント機器では、オ−ステナイト系ステンレス鋼、水力機器では、高張力鋼やマルテンサイト系ステンレス鋼が主体となる。板厚は、2mm程度の薄板から200mmをこえる厚板が適用されるが、20〜100mmが主である。溶接法としては、SMAW, GMAW, GTAW, SAW, EBW, LBWなどが適用されている。
以上から、溶接としては、厚板の多層盛溶接が対象といえる。
図1 主な重電機器