3.3 溶着速度の向上施策
溶着速度の向上として、主な具体策としては、以下のことが挙げられる。
個々の溶接プロセスの改善と適用溶接プロセスそのものを高能率プロセスに変更する施策が考えられる。
図12は、タンデムMAG溶接の例を示したものである。一つの溶融池に2つの電極からワイヤを挿入させる方法であり、条件を最適化することで一般的なMAG溶接の3倍の溶着速度が得られる。ここでは蒸気タービン機器の溶接に、ロボット化が可能なことから、SAWに代え導入している。

図12 タンデムMAG溶接
図13は、ACデジタルタンデムSAW(サブマージアーク溶接)の構成を示したものであるが、従来のタンデムSAW装置に比べ、2電極の波形を個別に幅広く制御できるため、応用範囲が広い点が特徴である。図14は、狭開先溶接に適用した事例を示したものである。図15は、水力機器の肉盛溶接に適用した事例で、波形条件を最適化することで、従来のSAWでは困難であった低希釈率の肉盛溶接を実現している。本システムでは、波形条件の最適化で、1台で狭開先突き合わせ溶接から肉盛溶接まで幅広く適用できる4)。

図13 デジタルタンデムSAW

図14 タンデムSAWの狭開先溶接への適用

図15 タンデムSAWの肉盛溶接への適用
図16は、TIG溶接の高能率化をめざして、開発した狭開先高集束ホットワイヤツインTIG溶接システムを示したものである。高能率化を実現させる手法として、2重ガスシールドにより高集束化し、溶け込みを増加させる方法や、狭開先化して必要溶着量を低下させる方法に加え、TIG溶接の高溶着速度化させる方法がある。具体的には、ホットワイヤ化、前方、後方の両側よりワイヤを挿入するツインワイヤ化があげられる。これらにより、下向き溶接姿勢で60g/minの溶着速度(通常のTIG溶接の10倍以上)を実現できる。 この溶接システムは、核融合機器のスンテンレス製真空容器の溶接に適用された5)。
従来から、原子力機器等に用いるオーステナイト系ステンレス鋼の溶接は、TIG溶接が主に適用されてきた。一般に、Ar-2%O2のシールドガスを用いるMAG溶接では、ビード表面の酸化スケールの問題から多層盛の溶接では各層グラインダ作業が必要となる問題がある。また、CO2をシールドガスに用いるフラックスコワードワイヤの溶接は、溶接金属へのC(炭素)のピックアップの問題から原子力機器への適用は敬遠されてきた。そこで、TIGに代わるMIG化として、図17に示すように、純Arシールドにて使用可能なメタルコワードワイヤを開発することで、これらの問題を解決できた。適用溶接条件範囲に考慮する必要があるが、実用に供することができる。

図16 狭開先高集束ホットワイヤツインTIG溶接

図17 純ArシールドのMIG溶接







