相談例16.チタン配管のティグ溶接
チタン配管のティグ溶接において、溶接部を低い温度となるまで大気からシールドすることが必要と聞きました。実際どのような方法でシールドするか、ご教示下さい。
回 答
チタンは銀色で光沢のある金属です。高温で特に活性で大気との親和力も強いため、高温になると空気中の酸素や窒素と反応して酸化物や窒化物を作りやすくなります。大気中で加熱すると、加熱された温度と時間に応じ、金属表面は酸化、窒化して金色(麦色)、紫色そして青色の順に着色し、さらに高温になると暗灰色、白色および黄白色へと変化して金属光沢が全く失われます。
酸化物や窒化物が形成されるとその部分は硬化して脆くなるため、溶接結果の良否はビード表面の色で判定されることが多く、その一例を示すと図1のようです。酸化が進行した溶接部は硬化および脆弱化が著しいため、曲げ試験を行うと割れが発生します。
図1 チタン溶接部の酸化変色による合否判定
チタンの溶接では、溶接部近傍のみでなく、温度が約450℃以上となる溶接部周辺までを、大気に曝されることを避けなければなりません。溶接ビードおよび熱影響部などを大気から遮蔽して適切なシールド効果を得るためには、できるだけ内径の大きいノズルを使用することが重要ですが、それだけでは十分なシールド効果を得られないことが多く、一般には図2に示すようなアフターシールドジグ(補助ガスシールドノズル)を溶接トーチのノズルに取付けて溶接します。アフターシールドジグとして市販されているものもありますが、ワーク形状によっては使用できないことも多いため、通常はワークに合わせて手作りされることが多いようです。
アフターシールドジグは、溶接トーチのノズルから流出するシールドガスの流れを阻害せずに、溶接部およびその周辺の加熱部全体にわたって良好なシールド効果が均一に得られるものでなければなりません。図3はアフターシールドジグの効果を示す一例ですが、アフターシールドジグのガス流出面積は大きいため、そのガス流量も多くしなければ良好なシールド効果は得られません。なお、ビード表面と同様にその裏面も加熱されると酸化して脆くなるため、裏波溶接などを行う場合には、ステンレス鋼と同様にバックシールドが必要です。
図2 アフターシールドジグ(トレーラーノズル)
図3 ビード外観におよぼすシールドの影響