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第6回

相談例17.SUS304熱交換器管板とSUS444チューブの溶接

チューブ内流体,重油(350℃)、シェル側冷却水(温度30℃、Cl有り)のクーラーにおいて、過去には、チューブにSUS304 又は炭素鋼を使用していましたが、SCCや腐食孔の問題があり、SUS444(仕様 SUS444TP 1/4B SCH80)を試すことになりました。チューブはコイル状に加工し、4本を繋いで伝熱面積を確保します。溶接箇所として、チューブ同士の突合せ溶接とSUS304(管板)とのすみ肉溶接があります。

文献などでフェライト系ステンレス鋼は溶接性が悪いとあり、溶接施工要領について調べましたが、見つけられませんでした。初めての製作で不安なので、それぞれの溶接方法(溶接棒、溶接速度、予熱後熱、熱処理の要否など)及び施工時の注意点についてご教示願います。

なお、溶接材料については下記のように考えていますが、これでよいでしょうか?

・SUS444チューブの突合せ溶接(TIG):インコネル系など高Ni合金又は共金系がありますが、熱処理が不要なインコネル系が良いと考えています。309系は、塩化物SCCの懸念がある為、使用を控えたいと考えます。

・SUS304管板とSUS444チューブの隅肉溶接:309系又はインコネル系など高Ni合金が考えられますが、冷却水と接しない為、309系の使用は可能と考えています。

回答

(1) 溶接材料の選定

相談者の考え方でよいと判断します。

・SUS444同士:共金の溶接材料では溶接金属の結晶粒が粗大化し、ぜい化するため(熱処理をしても回復しない)、塩化物SCCを嫌う継手ではインコネル系の溶接材料が推奨されます。具体的にはSUS444のPRE値を考えると625が推奨されます。

・SUS304とSUS444の異材溶接:塩化物SCCの恐れのない環境では309で溶接可能です。

(2) 予熱後熱、熱処理の要否

基本的には、予熱及び熱処理は不要です。熱処理を行なっても、SUS444のHAZの結晶粒粗大化及びぜい化は改善されません。

(3) 溶接施工時の注意点

・SUS444のHAZぜい化を軽減するために、できるだけ溶接入熱量を小さくしてください。特に、溶接電流を下げて、溶接速度が遅くなりすぎないように留意してください。

・異材溶接では、SUS444側の溶けこみは過大にならないように配慮してください。


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