株式会社 本田技術研究所
四輪R&Dセンター
佐 山 満
1. はじめに
地球温暖化対策として温室効果ガスの排出量削減が大きな課題となっており、その中でもCO2は化石燃料の燃焼によって排出される。国立環境研究所温室効果ガスインベントリオフィスのよると、日本における自動車からのCO2排出量は全体の約15%にあたり、今後一層の削減が求められている。
現在、自動車は3万点にも及ぶ部品の全てで軽量化を進めている。その中で、フロントサブフレームはエンジン・ミッション等を載せている大型の骨格部品であり、この部品の軽量化は大きな効果が期待できる。そのため、アルミニウム合金の適用拡大をはかり、鉄鋼材料との異種金属接合に取り組み軽量化を図った。本報告では、その取り組み内容と実用化の結果を紹介する。
2. 開発の狙い(サブフレームについて)
フロントサブフレームは、図1に構造を示す様に重量物であるエンジン、ミッションやサスペンション、ステアリングギヤボックス等を支持して車体に締結する骨格部品であり、強度と剛性を高次元でバランスさせて設計している。従来のサブフレームの構造は、プレス加工した軟鋼板をアーク溶接や抵抗スポット溶接で接合し、強度と剛性を確保している。
図1 フロントサブフレームの構造
これに対して、新しく開発したサブフレームは、強度と剛性に加えて大幅な軽量化を同時に成立させる構造とした。そのために、軟鋼板で構成されていたリアメンバをアルミニウムダイカストに置換して、1部品に集約することで軽量化と部品数の削減を図った(図2)。部品数は、リアメンバを構成していたブラケットやボルト、ナット等約30部品が削減可能となった。アルミニウムダイカストは形状や肉厚の自由度が高いので、運動性能に寄与するサスペンションロアアーム取付け部、エンジンやミッションマウント部、ステアリングギヤボックス取付け部の支持剛性を確保しつつ肉厚の最適化や補強リブの設定をおこなった。その結果、軽量化による燃費性能のみならず軽快な走行性能を達成できる構造が得られた。なおフロントメンバは、従来機種を踏襲した軟鋼板を使った構造とした。また、エンジン仕様違いや駆動違い等、リアメンバの形状仕様で造り分けができる構造となっている。
この構造を実現するために、4つの新技術(異種金属接合技術、防錆技術、ロボットFSW技術、非接触非破壊検査技術)を確立し、量産化を達成した。
図2 新旧サブフレームの比較