相談例21.ASME Ⅸ に準拠した溶接に必要な溶接施工法
ASME Ⅸ に準拠した肉盛溶接及びすみ肉溶接施工に、すでに所有している溶接施工法を活用したいと考えています。次の疑問点について教えて下さい。
(1) 肉盛溶接: 溶接施工法①(母材:SM400B / 1層目:溶接棒309LMo / 2層目以降:溶接棒316Lの肉盛溶接)を所有しています。この溶接施工法で、(母材:A105 (P-No.1) / 1層目:溶接棒309LMo / 2層目以降:溶接棒316Lの肉盛溶接)が可能でしょうか。
1層目及び2層目の肉盛溶接を1つの溶接施工法でカバーできるのか、それともSM400B+309Moの肉盛溶接およびSM400B+309Mo+316Lの肉盛溶接の2つの溶接施工法を取得すべきなのかが判りません
(2) すみ肉溶接: 溶接施工法②(母材A:SUS316 (P-No.8) / 母材B:SUS316 (P-No.8) / 溶接棒:316)を使用したV開先突合せ溶接(裏当金付)を所有しています。この溶接施工法で、母材:316L(肉盛溶接) / 母材:SUS316L(P- No.8) / 溶接棒:316Lを使用したすみ肉溶接が可能でしょうか。
316L(肉盛溶接)にはP-No.がないため、ASME Ⅸ QW-424.1およびQW-424.2によれば、不可能と解釈されます。しかし316L母材(肉盛溶接)は316L溶接棒で製造されるので、316L母材(肉盛溶接)で制限がつくのもおかしいと思います。
回答
(1) 肉盛溶接
2層以上の多層盛の場合、初層と2層以降に分けて2つの溶接施工法を取得することはしません。施工しようとしているP-No.1 の母材に、309LMo+316L を肉盛溶接した溶接施工法①の適用は可能と考えられます。
ただし、ASMEにはP-No.1の母材規格名が記載されていますので、SM400BがP-No.1として記載されているかどうかを確認してください。記載されてない場合は、発注者にSM400BはP-No.1相当と認めてもらう必要があります。認められない場合はASMEに記載されているP-No.1材(JIS材もあり)で新たに溶接施工法を取得する必要があります。
(2) すみ肉溶接
QW424.2の記述では、耐食肉盛の溶接金属は、その肉盛の化学成分に合致するP-No.の母材に置き換えてもよいと理解できます。従って、発注者に、“肉盛溶接は316であり、溶接金属の成分はSUS316(P-No.8)と同等なので、溶接施工法②でご質問のすみ肉溶接が可能“ と相談されることをお勧めします。
なお、溶接施工法の承認は発注者次第ですので、相談者の責任で発注者と折衝して下さい。