3. 工場溶接と現場溶接
鉄骨は①工場による柱および梁の製作と、②現地(現場建方)による柱と梁の接合の2工程に大きく分けられる。鉄骨製作工場は①に該当する。さらに、柱と梁を現地で接合しやすくするためにブラケットを工場にて柱に溶接して現地でボルト接合する場合と、ブラケットを用いず、直接、現地で柱と梁を溶接する場合がある(図3)。
図3 鉄骨の製作手順
4. 溶接法総括
これら一連の工程で一般的に用いられている溶接法・接合法を表1に示す。
表1 建築鉄骨で一般的に用いられる溶接法・接合法
4.1 鉄骨製作工場
1) 柱の製作
梁貫通方式と柱貫通方式では溶接法が異なり、梁貫通方式では炭酸ガスアーク溶接のみで製作される(図4 a)。特に最近はロボットとの組合せが多用されている。一方、柱貫通方式は主にサブマージアーク溶接とエレクトロスラグ溶接が用いられる(図4 b, c)。板厚が大きな場合は、炭酸ガスアーク溶接とサブマージアーク溶接を組み合わせた混用溶接となる。これらは次章以降で詳述する。
2) 梁ブラケット取付
炭酸ガスアーク溶接が用いられる。溶接長が短いため、人手による半自動溶接の適用が多いが、ロボットの採用率も上がりつつある(図4 d)。
3) 梁の製作
梁は形状としてH形鋼が用いられる場合がほとんどであるが、ロールHではなくビルトH、つまりH形鋼自体を溶接組立する場合は、すみ肉溶接にサブマージアーク溶接もしくは炭酸ガスアーク溶接が用いられている(図4 e)。H形鋼にスティフナーと言われる補強板を接合するには炭酸ガスアーク溶接が用いられることがほとんどである。
4.2 現地
1) 柱梁接合
現地ではH形鋼のウエブを先にボルト・ナットで締結し、その後上下のフランジを炭酸ガスアーク溶接する、混用接合方式が採用される場合が多い(図4 f)。ブラケット形式では上下フランジを通常、ボルト・ナット締結とされる。
2) 柱接合
工程が進んで階が上がる毎に、柱同士も接合する必要がある。ほとんどが炭酸ガスアーク溶接であり、姿勢は必ず横向となる(図4 g)。
3) 合成床スラブ
柱-梁構造とは関係ないが、現地特有の変わった溶接法として、各階のフロアを作るために必要なアークスタッド溶接がある。コンクリート床との一体化を図る目的で行われる。鋼棒を梁フランジに突き立てる溶接であるが、詳細は割愛する2-3)。
図4 代表的な鉄骨建築の溶接・接合部位と方法