5. 鋼管柱の溶接技術とロボット化
梁貫通形式の柱の製作は、角形または円形の鋼管と平板状のダイアフラムとの突合せ溶接が主な溶接工程(図5)であり、ロボット溶接に適した動作となること、そして溶接時間が長く、自動化効果が高いことから、多関節ロボット4)を用いた自動溶接システム化が最も進んでいる5)。
図5 鋼管柱の溶接姿勢
自動溶接システムは鋼管とダイアフラムを搭載した回転ポジショナと、ガスシールドアーク溶接トーチを搭載したロボットの組合せで構成され、これらの動きは通信によって協調制御6-7)される。鉄骨溶接ロボットシステムの分類としては、短尺鋼管の両側に、後工程で梁が付くダイアフラムを溶接する(コアあるいはサイコロと呼ばれる)小型システムとして「コア溶接システム」8)、コアを複数個連続的に溶接できる中型システムの「コア連結溶接システム」、長尺鋼管とコアを溶接し、かつ梁ブラケットも溶接可能な大型システムである「柱大組立溶接システム」9)が代表的である(図6)。
図6 鋼管柱のロボット溶接システムの種類 ((株)神戸製鋼所)
これらのシステムには鋼管柱に梁ブラケットを溶接できる機能が付与されているものも多いが、むしろ梁ブラケットを連続的に溶接することを重視した「反転仕口溶接システム」10)、「マルチワークシステム」の採用も最近増えてきている(図7)。
図7 仕口溶接システム ((株)神戸製鋼所)
これらの自動溶接システムに搭載されている代表的なロボット特有の溶接技術を列記する。
1) タッチセンサとアークセンサ
自動車分野向けロボットの施工対象は、一般に薄板の1パス溶接である。この場合、溶接時には予めティーチングしてある軌跡を再現するだけであり、センサはほとんど使われていない。一方、建築鉄骨用のロボットシステムでは、事前ティーチングが不要で、搭載ワーク毎に動作プログラムを自動生成するのが特徴である。そのため、溶接前に位置を確認するタッチセンサ11-12)(動画1)、溶接中の熱変形などに対応するアークセンサ13-14)(動画2)をフル活用している。
動画1 タッチセンサの様子
動画2 アークセンサの様子(スローモーション再生)