3) スラグ自動除去機能
鉄骨ロボットの溶接では炭酸ガスをシールドガスとして用いた炭酸ガスアーク溶接がほとんどである。その理由は、開先溶接に適した深い溶込みが得られ、Ar(アルゴン)のようにブローホールが発生し難く17)、コスト的にも安価であるからである。しかし、Arと異なり、炭酸ガスは酸化性を有するので、溶融池で精錬反応を生じる結果、溶接スラグが発生する。スラグは絶縁性なので、堆積すると、アーク発生の阻害要因となり、またビード形状不整、スラグ巻込み欠陥の発生を起こす。したがって、適度なタイミングで除去しなければならない。しかし、その都度ロボットを停止して人手でスラグ除去を行っていては、長時間の無人運転は不可能である。そこで、鉄骨溶接ロボットシステムには、スラグ自動除去機能を備えているものがある。これは溶接トーチを自動でスラグ除去用装置(図12)に持ち替えて、たがねの要領でスラグを剥離除去する機能である(動画4)。この装置を備えたロボットシステムは飛躍的に連続溶接時間が延長される。
図12 スラグ除去装置 |
動画4 スラグ除去の様子 |
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なお、高強度鋼用のように溶接材料によっては、スラグの密着性が強く、スラグ除去システムでも取り残しやすいものがある。このため、溶接材料メーカーでは、鉄骨溶接ロボットに適した、スラグ量が少なく、かつ剥離性の良い専用溶接ワイヤを開発し、これらの組合せを推奨している18-19)(図13, 14)。
図13 ロボット用溶接ワイヤのスラグ剥離性(1)17)
(溶接ワイヤ;JIS Z3312 YGW18規格共通, 下向溶接 板厚16mm 室温冷却後)
図14 ロボット用溶接ワイヤのスラグ剥離性(2)17)
(溶接ワイヤ;JIS Z3312 YGW18規格共通, ダイアフラム/角形鋼管周継手溶接 板厚25mm)