1) 多層サブマージアーク37-39)
従来、大入熱サブマージアークの多層溶接は、品質確保の点から難しいと言われてきたが、最近は施工管理を厳格に行うことが必要ではあるが、実用化されつつある(図22(a))。これによって低能率原因である炭酸ガスアーク下盛溶接を無くすことができ、能率が向上するとされる。断面マクロ写真の一例を図23に示す。
図22 溶接組立箱形断面柱における
様々な角継手高能率溶接施工法
図23 多層サブマージアーク溶接の断面マクロ写真(板厚80mm)39)
2) 下盛サブマージアーク溶接40)
一般的な混用溶接継手(図23)とは逆に、サブマージアークを下盛として、不足した表側開先断面を炭酸ガスアークで埋める方法である(図24(b))。
従来の混用溶接継手よりもサブマージアークが大電流で使え、また炭酸ガスアークによるサブマージアーク用開先形成の手間が不要である。ただし、外観が劣るという短所があるとされる。
3) 炭酸ガスアークの大溶着化41-42)
下盛炭酸ガスアークの能率向上、あるいはサブマージアークへの切替を省略する手段である。炭酸ガスアークは鋼種や溶接材料に応じて入熱制限が課せられているので43)、安易には電流を高められない。そこで、入熱があまり上がらずに溶着量が高められる炭酸ガスアーク+ホットワイヤ法が提案されている。炭酸ガスアーク+ホットワイヤ法は通常の炭酸ガスアークに加え、通電加熱したフィラーワイヤを挿入する2電極法である(図24)。フィラーは通電され、溶融が促進されるものの、アークのように高エネルギーを発生しないので、全体として入熱を抑制したまま高溶着化をはかることができる。本施工を適用することで炭酸ガスアーク溶接の総パス数を減らすことができるとされる(図22(c))。
図24 炭酸ガスアーク+ホットワイヤ法
(F-MAG)溶接法の模式図
4) 狭開先/高速回転アーク溶接法44)
下盛炭酸ガスアークの能率向上策として、開先断面積を極力小さくして溶接パス数を減らす思想である。炭酸ガスアーク溶接部はほぼ角度が無い平行開先、一方、サブマージアーク溶接部はV開先の2段階先形状となっている。平行開先は開先面の溶込み不良が非常に発生しやすいため、その対策として、図25に示す機構を持った特殊な溶接トーチである高速回転アーク溶接法が採用されている。本報を下盛に採用した角継手溶接部の断面マクロ写真の例を図26に示す。
図25 高速回転アーク溶接法の機構45) |
図26 高速回転アーク狭開先MIG溶接 |
5) 狭開先/曲りチップ溶接法46)
サブマージアーク溶接は用いず、炭酸ガスアーク溶接のみの狭開先施工で高能率化をはかろうとするものである。4)よりも広いルートギャップとしているが、板厚全てを平行開先として単純化している。
平行開先であるため、やはり壁面の溶込み不良対策が必要であるが、本法では一定方向に曲がったコンタクトチップを用いて、壁面を積極的に溶かす。開先の左右面に対し、曲り方向を逆にすることで、1層あたり2パス積層される(図22(e))。
6) 立向姿勢化とエレクトロガスアーク溶接法
発想を大きく変え、柱を横置ではなく縦置に設置して、角継手を高能率な2電極エレクトロガスアーク溶接法(図27)による立向上進姿勢とすることによって、極厚の鋼板も1パスで溶接できるようにする工法である47-52)。(図22(f)) 使用される溶接装置の例を図28に、溶接部の断面マクロ写真の例を図29に示す。
図27 角継手の立向姿勢2電極エレクトロガスアーク溶接法
図28 2電極エレクトロガスアーク溶接装置; |
図29 2電極エレクトロガスアーク溶接法による |