相談例22.一般構造用鋼材(SS鋼)はリムド鋼か
JIS規格の一般構造用鋼(SS)及び溶接構造用圧延鋼(SM)は、日本では全てキルド鋼として生産されていると聞いております。しかし、実際に国内のミルメーカーより購入したSS400のミルシートを確認しますと、Si量が0.01%となっており、Si脱酸されていない、つまり、リムド鋼であると判断されます。
キルド鋼レベルまで脱酸されているとすれば、ミルシートには記載されないAl等の脱酸元素が添加されている、又はRH脱ガス等の2次精錬プロセスで脱酸されているという理解でよろしいでしょうか?
回答
現在、日本では鋼材の99%以上が連続鋳造法で製造されており、この製造法では(溶鋼中の酸化物による)連鋳ノズルつまりを避けるために溶鋼中の酸素を20〜30ppm程度以下にする必要があります。つまり、全てキルド鋼になります。
ミルシートにおけるSi量から、リムド鋼かセミキルド鋼(キルド鋼)かの判別は20年以上以前では可能でしたが、最近の真空精錬技術(RH、VOD法など)の進歩によってキルド鋼でもSi≦0.05%の製品が製造可能となっています。現在では低Siとの理由でリムド鋼と決め付けることはできません。
但し、RH、VOD真空精錬を行なう場合もFe-Al等の脱酸剤を同時に添加するので、SiO2が還元されてSi含有量は0.2〜0.4%程度になります。このため、低Si化のためには溶解時に高塩基度スラグになるような特殊処理が必要となります。
低Si化の目的としては、Cr-Mo鋼の焼もどしぜい化及びクリープ特性の改善があります。例えば、蒸気タービン用Cr-Mo-V鋼ロータ材では、焼もどしぜい化及びクリープ特性の改善のためにVCD法を用いて低Si化されています。ロータ材は高速回転するため鋼中の非金属介在物を極めて少なくした高清浄鋼です。0.02Siですがキルド鋼です。
蒸気タービン用Cr-Mo-V鋼ロータ材成分例:
0.19C-0.02Si-0.33Mn-0.003P-0.009S-11.07Cr-1.48Mo-0.21V-0.043Nb-0.021N-0.005Al
また、TS490級高張力鋼のHAZじん性改善(島状マルテンサイトの生成抑制)した低Si鋼が考えられますが、一般には市販されていません。
貴殿が入手されたSS400鋼は通常の工程品ではなく、何らかの目的のために製造された特殊なケースと思われます。