相談例27.PWHT温度と保持時間について
SS400鋼(板厚9mm)をロール曲げし、直径600mmにします。その後、部品を溶接取り付けし、完成させるのですが、仕上り直径を600±0.2mmにしたいので、PWHTを施工する予定です。ただ取り付けた部品の特性上、PWHT温度を500℃以下にせねばなりません。この場合、PWHT温度と保持時間はどのように決めるのですか。またPWHTのポイントがあれば教えて下さい。
回答
溶接後熱処理方法については、JIS Z 3700 ” 溶接後熱処理方法” に規定されています。ここでは、SS400のようなP1鋼(炭素鋼)に対して、規定の温度で保持することが適切でない場合は、受渡当事者間の協定によって最低保持温度を下回る温度で後熱処理を行うことが認められています。この場合の保持温度と最小保持時間は規格中の表2に示されており、具体的には規定保持温度からの低減温度が84℃で、最小保持時間は10時間、低減温度が112℃で、最小保持時間は20時間です。低減温度が84℃と112℃の中間の場合は比例法で計算します。
P1 鋼の規定最低保持温度は595℃ですので、上記を参考に実施されるPWHT温度に応じて最小保持時間を計算して下さい。この場合、PWHT温度は483(595‐112)℃以上でなくてはなりません。
また、PWHT時の加熱中、冷却中および保持時間中の被加熱部の温度差、加熱速度および冷却速度、炉入れ温度および炉から取出し温度等が規格に規定されていますので、JIS Z 3700 をよく読んでください。
なお、十分ご承知と思いますが、PWHT時の変形に留意する必要があり、変形防止のジグを取りつけ、円筒を立ててPWHTをするのが良いと考えます。製品の形状(部品も含め)に合わせてご検討ください。