相談例33.圧力容器での非破壊検査を要求されない場合の突合せ溶接継手の余盛高さ
圧力容器の製造において、突合せ溶接継手で非破壊検査を行う場合には、各種規格(JIS等)や、法規(特定設備検査規則等)で余盛高さの規定(2.5mm等)があります。しかし、非破壊検査を行わない場合には余盛高さの規定が無いように見受けられ、余盛高さの許容値の決定に困っております。非破壊検査を行わない場合の余盛高さの許容値を決める指針や、技術的見解があればご教示下さい。また、別の業界などで採用されている一般的な許容値の例などがありましたらご教示下さい。
回答
相談に記載されているように、圧力容器の突合せ溶接では放射線透過試験で正しい評価が得られるように余盛高さを規定しており、放射線透過試験を行わない場合には余盛高さを規定していません。余盛高さの規定がない場合、余盛高さの許容値を決めていないのが一般的です。すなわち溶接表面が隣接する母材の表面より低くならないように規定しているだけです。
許容値を設ける例として、①過剰余盛を避けて無駄な溶接量を削減する、②ビード外観を良くするため等が考えられますが、各企業が自主的に設定しているだけで、業界として一般的な許容値の指針はありません。
以下にその他業界での例を示します。
余盛形状(特に溶接止端部形状)は疲労強度に影響を及ぼし、余盛角度が大きく、余盛高さが高いほど、疲労強度は低くなります。この観点から道路橋示方書及び建築工事標準仕様書JASS6鉄骨工事ではビード幅に応じて余盛高さを規定しています(溶接・接合技術総論 P481及び457参照)。また、船舶では余盛高さの規定はなく、余盛角度を規定しています(溶接・接合技術総論 P.507参照)。
なお、道路橋示方書及びJASS6での規定の要点は次のようになっています。
- ビード幅が15mm未満は、余盛高さが3mm以下
- ビード幅が15mm以上25mm未満は、余盛高さが4mm以下
- ビード幅が25mm以上は、余盛高さが(4/25)×(ビード幅)mm以下