前号では、IIW溶接技術者認証制度に於いて実施されているシラバス(教授内容)について触れた。このシラバスは4つの章で構成されている。読者の皆さんもよくご存じのWES-2級のテキストと演習問題集はこれにならい4章で構成されている。1級及び特別級のテキスト(特論)は6章構成だが、1〜4章は2級と同じである。5、6章が特別級対応のフレーム及びベッセル系の応用編として加えられている。
前号まで、第1章「溶接法及び溶接機器」及び第2章「金属材料と溶接性ならびに溶接部の特性」に関係する話題を提供してきたつもりである。この順でいくと、今回は第3章「溶接構造の力学と設計」の話題を提供することとなる。ところが、タイトルからうかがえるように、この章に関する用語は、溶接構造のそれぞれの製品に対応する業界の定める規格や規定に準拠するものが多く、国際規格(ISO規格等)でも用語の統一が極めて困難なものとなっているようである。溶接の分野でも溶接記号に関するものを除くと、正直に言って、用語としてまとめるのに困難を感じたところである。
意外に知られていない?WeldとWeldingのちがい
Weldには動詞と名詞があり、それぞれ「溶接する」と「溶接」の意味がある。前者に「ing」をつけたWeldingはその動名詞である、といってしまえばそれまでである。しかし今回あえてとりあげた理由は、実は私自身がこれまでこの両者の区別を正確に理解していなかったことにある。長年溶接に関係してきて今更告白するのは極めて恥ずべきことであるが、実は事典に関係してきて初めて認識するに至った次第である。
名詞として使う場合、Weldは「溶接された、又は溶接される箇所・部位」、「溶接継手」などの意味がある。つまり極論すれば「溶接部」を指す。したがって、次にあげる用例のように、何れも溶接部に限定されて用いられている。溶接部にはHAZなど近傍も含まれる。