また動画3に、X線透過観察装置(大阪大学接合科学研究所所有)を用いて、上記の不安定な埋もれアーク現象を撮影した動画を示す。溶接方向は向かって右から左の方向で、動画の中央近傍に見える白い部分が埋もれ空間を示している。埋もれ空間は深い部分から大きく揺動しており、極めて不安定なアーク現象となっていることがわかる。
動画3 一般的な定電圧特性の溶接電源を用いた埋もれアーク現象のX線透過観察動画
このように埋もれアークは不安定化しやすく、深溶込みが期待される高電流域においては特にその傾向が顕著である。そのため埋もれアークの適用は従来容易ではなく、適用条件も限定され、現象としては認知されているものの広く普及しなかった。
しかし近年では、埋もれアークの研究は少なからず行われており、溶接電流300A程度でのアーク安定化技術2)や、板厚10mm程度の1パス貫通溶接についての報告3,4)がある。そこで筆者らは、さらなる厚板への埋もれアークの適用を目的とし、500Aを超える高電流域における埋もれアークの安定化に取り組んだ。
3. 埋もれアークの安定化
埋もれアーク溶接においては、埋もれ空間を形成する溶融金属の側壁が中央に向かって流れ込もうとし、それによって埋もれ空間の径が小さくなる。埋もれ空間の径が小さくなると、アーク力が溶融金属の側壁を強く押し戻そうとし、埋もれ空間の径は大きくなる。これが繰り返され、埋もれ空間および溶融金属が大きく揺動してしまい、埋もれアークが不安定化する。したがって埋もれアークを安定化するためには、図4に示すような埋もれ空間の側壁部分を、何らかの方法で押し支えるのが効果的である。

図4 埋もれアーク安定化のポイント
そこで筆者らは、埋もれアークを安定化するための出力波形制御として、電圧を周期的に変化させる電圧振幅制御を開発した。電圧振幅制御における電流・電圧波形の一例を図5に示す。電圧振幅制御においては、高電圧期間と低電圧期間が周期的に繰り返され、それぞれの期間で異なる溶滴移行形態を利用している。

図5 電圧振幅制御における電流・電圧波形例








