4. 高電流埋もれアーク溶接システム「D-Arc」の開発
先述の電圧振幅制御により安定化した高電流埋もれアークを用いて、高能率アーク溶接システム「D-Arc」を開発した。システムの構成例を図8(ロボット接続時)および図9(自動走行台車接続時)に示す。溶接電源は2台を並列に接続することにより、最大1000Aの高出力に対応している。送給装置は最大送給速度70m/minに対応しており、さらに補助送給装置(およびワイヤバッファ)を併用することで、送給経路が長い場合など送給抵抗が高い環境においても、安定してワイヤを高速送給することができる。また水冷トーチには銅合金の3Dプリンタ造形技術を利用しており、冷却水の経路を工夫することで、コンパクトながらも最大1000Aでの使用に対応している。

図8 D-Arcシステム構成例(ロボット接続時)

図9 D-Arcシステム構成例(自動走行台車接続時)
D-Arcシステムを用いて、板厚19mmの突合せ溶接を行った結果を図10に示す。なお図10には、従来のCO₂アーク溶接による溶接の一例を併せて示している。従来のCO₂アーク溶接では、板厚19mmの突合せ溶接を行う場合、溶接パス数は6パス程度必要であったが、D-Arcでは1パスで貫通溶接を行うことができる。また開先面積が小さくなるため、溶接ワイヤの消費量も低減される。さらに、溶接パス数・総入熱量が低減されるため、角変形などの溶接変形量も大幅に低減することができている。継手の機械的特性も良好であり5),6)、高能率かつ高品質な溶接を実現することができる。

図10 板厚19mmの突合せ溶接例
また、D-Arcによる様々な溶接の例を図11〜図14に示す。
図11は板厚9mmの突合せ溶接であり、開先なし(I開先)・ギャップ0mmの条件でも、溶接速度60cm/minの高速貫通溶接が可能となっている。

図11 板厚9mmの突合せ溶接例
図12は板厚35mmの両面突合せ溶接であり、ルートを厚くとったX開先を用いることで、裏当て無しで完全溶込みの突合せ溶接を行うことができる。

図12 板厚35mmの両面突合せ溶接例
図13はT継手の両面完全溶込み溶接であり、溶込みの深いD-Arcにより、開先をとらずとも表裏各面1パスで完全溶込み溶接を行うことができる。

図13 T継手両面完全溶込み溶接例
図14は板厚40mmの片側突合せ多層溶接であり、ギャップ0mmの狭開先条件でも、十分な溶込み深さの初層溶接が可能となっている。また埋もれアークでも安定したウィービングを行うことができ、4層目・5層目ではウィービングにより十分な溶込みの幅とフラットなビード外観を実現している。

図14 板厚40mm突合せ溶接例
このようにD-Arcは様々な溶接継手に適用可能であり、中厚板・厚板の溶接能率を大幅に向上することが可能となる。







