7. 最新技術への応用
7.1 コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)8),9),10)
物体を輪切りにしてその断面像を観察するCT法は、医療分野では種々の体の部位の検査方法としてすでに一般化されている。2次元表示のスライス画像を直交方向に重ねて立体像を再構築させることができ、これを通常3D画像と呼んでいる。
医療用のCT装置では円筒型の中に人間が入って、その周りをX線発生器と検出器が回転する方法がとられているが、工業用の場合はエネルギーの高いX線が必要となり装置が大型となるため、対象物をターンテーブルで回転させる方法が一般的である。
照射するX線は2次元的な扇形のファンビームと、3次元的な立体形のコーンビームの2通りがあり、それぞれ図26及び図27にそれらの概要を示す。前者のファンビームでは一回の照射で得られる断層画像を順次重ねていく方法でやや手間がかかるのに対して、後者のコーンビームでは一度の照射で立体的な画像が得られ効率的である。

図26 ファンビームX線によるCT

図27 コーンビームX線によるCT
複雑な形状をした各種部品の検査はもとより、外部だけでなく内部の詳細形状を把握することによってリバースエンジニアリングへの適用が期待される。図28に自動車産業などで用いられる各種部品の3D画像と断面画像を表示した例を示す。

図28 X線CTによる断層画像と3D画像
7.2 片面からの放射線検査(後方散乱X線)
デジタル化してコンピュータを応用した画像処理等が行われるようになったとはいえ、放射線透過試験において最終的に超えられない問題点は透過法であること、すなわち超音波探傷試験のような片面からの検査ができないことである。この問題点を解消するため、試験体にX線を照射して、コンプトン散乱(反射)する放射線を検出する方法が従来から検討されてきたが、この方法で透過写真と同様な結果を得るためには、散乱X線の方向を特定して検出する必要がある。近年米国で開発され既に実用化されている後方散乱X線装置の概要を図29に示す。

図29 後方散乱X線による画像構築の原理
図中の左側から細く絞ったX線ビームを右側にある試験体に対して扇形状にスキャンして照射させ、それぞれのビーム位置で散乱したX線を中央のBの位置にある検出器で散乱方向を特定して検出する。この結果、照射した断面に対して散乱X線の強度分布から線状の画像データが得られ、この装置全体又は試験対象物を直角方向に動かすことにより、二次元的な平面画像を構築することができる。この装置の場合は、図の左端のAの位置に透過した放射線を検出する機能も備えており、透過写真画像が同時に得られる。
後方散乱X線のもう一つの特長は、樹脂などの原子番号の小さい物質に特異的に反応するため、爆薬物、プラスチック、麻薬など従来の透過法では検出できなかった物体を高いコントラストで画像化できることである。最近、刃物や拳銃などの金属部を樹脂に置き換えて製造することにより、従来のX線検査から逃れようとする犯罪が見られるが、このような場合に非常に有効な方法である。
図30に透過X線及び散乱X線を用いてスーツケースの内部検査を実施した例を示す。透過型X線では見つからなかった、拳銃、プラスチック爆弾及び麻薬が後方散乱X線を用いて白く強調された画像として現れている。
この方法は主にテロ対策などのセキュリティ分野で注目され、米国の政府や軍事機関で使用されて以来、現在では日本国内も含めた各国で空港や港湾での貨物検査などにも用いられている。

図30 手荷物検査におけるスーツケースの画像の比較








