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静的試験
―引張試験、曲げ試験、硬さ試験―

ここまでは母材の引張試験について述べたが、溶接継手においては引張試験を行うことによって継手効率が得られる。継手効率とは、母材の引張強さに対する継手の引張強さの比率である。

溶接金属は、多くの場合母材よりも引張強さが強くなるように設計されるため、引張試験後の破断位置は母材になり継手効率は100%となる。この様に母材よりも溶接金属の強度が高い継手をオーバマッチ継手という。逆に、溶接金属の強度が母材の強度を下回る継手をアンダマッチ継手という。

アンダマッチ継手に限らず、アンダカット、ブローホールなどの溶接欠陥の影響を受けて溶接部で破断し、継手効率が100%を下回る事がある。なお、破断面積に対する溶接欠陥の割合を欠陥率といい、欠陥率の増加と共に伸びは減少するが、欠陥率数%程度であれば引張強さの低下には繋がらない事が分かっている(図34)


図3 欠陥率と伸び、引張強さとの関係4)

一方、アンダマッチ継手でもそのごく一部が低強度となる場合や、溶接熱影響部が軟化する材料で試験を行うと、低強度部と高強度部で変形量が異なるために低強度部が荷重軸方向の他に試験片直径方向にも応力を受け、多重応力状態となる。このとき、高強度部によって低強度部に生じる拘束を塑性拘束という(図4)。低強度部の断面収縮は隣接の高強度部に拘束されるため、塑性拘束がない場合と同じ変形量を低強度部が得るためにはより大きな応力が必要となる。そのため、結果的に継手の引張強度は低強度部の強度よりも大きくなる。この塑性拘束は、継手板厚に対して低強度部の厚さの割合が小さいほど、また継手溶接体の板厚に対して板幅の割合が大きい広幅試験ほど強く作用し、継手としての引張強度は大きくなる。図5に示すように、広幅継手において母材の引張強さに対する低強度部の引張強さの割合(軟質度Sr)が85~90%以上になると、母材強度とほぼ等しくなる5) ことが分かっている。


図4 低強度部を持つ試験片に生じる塑性拘束


図5 低強度部を含む継手の引張強度に及ぼす軟質度の影響5)


(WE-COM会員のみ)