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第14回

相談例41.種類の異なるステンレス鋼間の異材溶接施工時の留意点について

オーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lと二相ステンレス鋼SUS329J4Lの異材溶接施工を検討しています。ティグ溶接またはマグ溶接(フラックス入りワイヤ)を用いる際の入熱管理および溶接材料選定に関して、注意すべき点を教えて下さい。

回答

(1) ティグ溶接の場合

溶接の注意点は、オーステナイト系ステンレス鋼の場合と同様です。板厚が薄い場合には、SUS329J4LのHAZのぜい化防止の観点から入熱制限(目安として概ね8000J/cm以下)を行うことをお勧めします。溶接金属組織の観点からは、溶接材料の選定と、希釈率のコントロールに留意して図1のシェフラーの組織図上で、高温割れと低温割れを回避できる推奨組成範囲となるようにすることが重要です。なお1層目を309LMo、2層目以降を329J4Lという溶接材料の組合せでは、推奨されている組織となるので、問題はないのですが、溶接材料の管理という点から溶接材料を1種類(たとえば1層目から最後まで329J4L溶接材料)にすることをお勧めします。

図1 シェフラーの組織図におけるオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lと
二相ステンレス鋼SUS329J4Lとの異材溶接金属の推奨組成範囲


(2) フラックス入りワイヤによるマグ溶接(CO2溶接)の場合

溶接材料がSUS316LやSUS309LMoでは、SUS329J4Lとの希釈により溶接金属の窒素量が高くなり、スラグ剥離が悪くなる恐れがあります。このため高窒素量でもスラグ剥製性が良いようにフラックス設計されているSUS329J4L溶接材料の適用をお勧めします。入熱の考え方はティグ溶接と同様ですが、板厚が薄い立向溶接では、入熱が過大となる可能性が高いため、ティグ溶接をお勧めします。


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