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第15回

相談例43.薄鋼板の隅肉溶接

定格容量500Aのサイリスタ制御溶接機を保有して、中・厚板の溶接を主として行っています。これまで薄板の溶接経験は、ほとんどありません。この溶接機で、板厚3.2mmの軟鋼板のT継手に脚長4mmの隅肉溶接を行うことは可能でしょうか? シールドガスには100%CO2を、溶接ワイヤにはワイヤ径0.9mmのソリッドワイヤ(YGW12)を用い、半自動溶接する予定です。また混合ガスを適用するなどして、良好な溶接結果が得られる方法があれば教えてください。

回答

半自動溶接で脚長4mmの水平隅肉溶接を行う場合、通常の溶接速度(トーチ移動速度)では、溶接電流130〜160A、アーク電圧18〜22Vを用います。溶接速度を少し早くする場合には、溶接電流を180〜200A、アーク電圧を20〜24V程度にします。シールドガス流量は15〜20 ℓ/min、ワイヤ突出し長さは、0.9mmワイヤの場合には12mm程度、1.2mmワイヤの場合には15mm程度が標準です。

したがって、定格容量500Aのサイリスタ溶接機を使用した脚長4mmの隅肉溶接は十分可能です。ただし、500A機は200A程度以上の大電流溶接を対象とした溶接機ですから、できれば350A機の使用を推奨します。

なお、脚長4mmの隅肉溶接ではワイヤ径0.9mmよりもワイヤ径1.2mmのワイヤの使用を推奨します。ワイヤ径0.9mmワイヤでは、溶接電流が150A超えるとアークがやや不安定になりやすく、スパッタも増加します。150A以上の電流で溶接する場合には、1.2mmワイヤを使用した方が安定した溶接が行えます。

シールドガスに混合ガス(Ar+20%CO2)を用いれば、100%CO2の場合より安定したアーク状態が得られ、ビード外観も美麗となり、スパッタも減少します。なお、シールドガス以外の改善策として、フラックス入りワイヤの採用がありますが、上述したような溶接条件(溶接電流200A以下)では良好なアーク状態を得にくいため、お勧めできません。


(WE-COM会員のみ)