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FSWの基礎と接合の革新

2. 接合ツール

図3は、接合ツール(回転ツール)の模式図である。ツールは径の大きいショルダ(Shoulder)部とその先端にあるプローブ(Probe)部から構成されている。プローブのことをピン(Pin)と呼ぶこともあるが、(一社)溶接学会編「摩擦攪拌接合―FSWのすべて―」(産報出版)ではプローブの方を推薦している。前述のように、接合中はプローブのみを材料中に押し入れ、接合すべき突合せ面に沿って移動させる。


図3 典型的なツール形状(5mm厚板用)

プローブの長さは、板厚とほぼ等しく、裏あての板と接触しないように0.05〜0.2mm程度短いのが普通であるが、熱伝導率が悪い材料を接合する際には、この長さをより板厚に近づける必要がある。プローブの直径は一般にプローブ長さと同程度で、例えば5mm厚の板材を接合する際には、プローブの長さが4.9mm程度となるから、プローブの直径はM5〜M6が標準である2)。ショルダ径はプローブ径のおよそ3倍が標準であり、この場合、15mm程度となる。おおまかなツール設計指針は、以下の通りである。

プローブ長さ ≒ 板厚 (板厚-0.1)      (1)
プローブ径 ≒ プローブ長さ (≒板厚)     (2)
ショルダ径 ≒ プローブ径×3 (≒板厚×3)  (3)

繰り返しになるが、上記はあくまでおおよその指針であるので、ご注意頂きたい。特に、式(2)、(3)は目安程度である。一方、その中でも被接合材の厚さが5mm付近の場合に、上記式の計算値が最も実際の値に近くなる。式(1)は多くの板厚で成り立つが、式(2)、(3)の値は、一般に5mmより板厚が厚ければ、実際の径は計算値より小さめとなり、5mmより薄ければ、上記計算値より大きめとなる。例えば、板厚2mmの場合に式(2)をそのまま使用すると、プローブ径は2mmとなり、すぐに破断する形状となるので、実際には、例えばプローブ長さ1.9mm、プローブ径4mm、ショルダ径12mmなどとなる。

プローブには、通常ネジがきってあり、右ネジの場合には左回転、左ネジの場合は右回転で用いる(通常のネジとは逆の回転)。プローブの先端は、不可欠ではないが、ある程度挿入しやすいようにRが付けられているのが一般的である。また、ショルダ部は平面ではなく、根元に向けて角度10度ぐらいの傾斜で凹んでいるのが一般的である。このように、凹ますことで、バリの発生を抑制できるとされている。

一般的な回転ツールを用いた場合、バリを抑制するためには、ツールはプローブ先端が先行するように進行逆方向に1〜5度程度傾けるのが望ましい(前進角)。回転数は1分間に数百から数千回転、接合速度は数百mm/minとするのが一般的であるが、数m/minも可能である。

その他、バリの抑制のためには、図4のように、ショルダ面にスクロールを切り、ツールの回転によって材料が内側に流動するように設計することも有効である。このようにすると、ショルダ面を凹ではなく、凸とすることができるばかりか、前述のツールの傾斜(前進角)が不要となり、装置の構造を単純化させ、自動化する上では有利である。(ただし、知的財産に関しては注意が必要である。)


図4 ショルダにスクロールを切ったPCBNツール

回転ツールの材質は、アルミニウム合金を接合する際には、SKD61等のSKあるいはSKD工具鋼を使うのが一般的である。銅合金の場合にはWC超硬合金製などのツールが有効で、さらに融点の高い鉄鋼材料やチタン合金などの材料を接合するのであれば、PCBN、Si3N4、SiAlONなどのセラミックス、超硬合金、W合金、Co合金、Ni合金、Ir合金などの高融点金属などの材質を用いる必要があるため、接合長に対するコストが高いのが現状である。現在、各社しのぎを削って開発中である。


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