4.接合条件の決め方
摩擦攪拌接合で健全な継手を得るために最も重要なのは、適切な入熱量(温度)である。接合温度に大きな影響を及ぼすパラメータとしては、ツールの回転数及びツールの移動速度が重要で、ツールに加える押しつけ力も大きな影響を及ぼす。
前述のように、摩擦攪拌接合の接合メカニズムが再結晶であることから、適切な接合温度は、概ね融点の7〜8割の温度である。これに従って計算すると、例えば融点が660℃のAlは、933K×0.7〜0.8≈653K〜746K=380〜473℃、融点が1536℃のFeは、1809K×0.7〜0.8≈1266K〜1447K=983〜1174℃となるため、一般にAlの場合、380〜470℃、Feの場合、1000〜1200℃付近が適切な接合温度と言える。
一方、上記はあくまで目安であり、例えば、炭素鋼に対して、ツールの寿命や無変態での接合という観点から、700℃以下で接合する場合もある17,18)。鉄鋼材料を無変態で接合する場合、炭素量の多い難接合材でも割れなどを防止でき、FSWの利点を最大限活用していると言える。
一般に、回転数が大きくなると温度が高くなり、接合速度が大きくなると、温度が低くなる。
Frigaardら19)は、FSW中に材料に投入される熱量Q(W)は、

と表せるとした。ここで、μ:摩擦係数、P:攪拌部の圧力(N/m3)、N:ツール回転数(s-1)、R:ショルダ径(m)である。(回転ツールのショルダ部と接合金属の間のみで発熱すると仮定)
この式より、発熱量Qは、圧力Pおよび回転数Nに比例し、ショルダ部の直径Rの3乗に比例することが分かる。一方で、式(4)を圧力でなく、荷重L(N)を用いて表現すると、

となり、数式上では、入熱は荷重、ツール回転数、ショルダ径のいずれにも比例するというシンプルな式となる。
式(4)および(5)は、回転ツールを移動させない場合のモデルである。回転ツールを移動させる場合には、接合速度Vをツールの回転数Nで割った回転ピッチが一つの指標となる。

回転ピッチはツールが1回転する間に移動する距離で、FSW後に接合部表面に半円状の筋が周期的に形成するが、この間隔に相当する。回転ピッチが大きいということは、筋の間隔が大きい、すなわち1回転の間に移動する距離が大きいことに相当するため、入熱が減少すると言える。
以上の知見をまとめて、圧力の代わりに荷重L(N)を用い、板厚tを含めて表現すると、単位体積当たりの入熱量は、式(7)のように表すことができる。大まかに荷重、ツール回転数、ショルダ径に比例し、移動速度、板厚に反比例するという極めてシンプルな関係式となる。

この式は、あくまでおおよその傾向を示すもので、絶対的なものではないが、例えば、欠陥が形成した時に、どちらの方向に条件を振れば良いか考えるときに、極めて有用な式である。








