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FSWの基礎と接合の革新

6.ツールの不要な線形摩擦接合(LFW: Linear Friction Welding)

FSWを用いると、これまで接合困難であった材料も接合が可能になるなど、大きなメリットが存在する。しかし、アルミニウム合金と比較して、鉄鋼材料のFSWの実用化は進んでいない。その主な理由の一つとして、十分なツール寿命が得られていないことが挙げられる。現在、それぞれの企業や大学で積極的にツール開発を進めているが、コストに対して十分な寿命を有するツールは、まだ存在していない。一方、近年そもそもツールが不要である線形摩擦接合(LFW)が検討されている。LFWは、図9に示すように、材料同士を押し付け、その一方を界面に平行に線形に振動させることで摩擦熱を発生させ、接合する方法である。


図9 線形摩擦接合(Linear Friction Welding)

本手法は、FSWと異なり、精細な温度制御が困難であると考えられていたが、著者らのグループが、印加圧力によって温度を制御できることを示し、極めて大きな注目を浴びている23-25)。予想に反して、加えられた圧力の増加と共に接合温度は低下する。FSWの場合、ツールへの印加圧力の増加と共に温度は上昇するが、LFWは全く反対の関係を有する。これは、界面での温度が上昇することにより鋼が軟化し、その強度が印加圧力を下回ると、バリとして放出されるためである。印加を大きくすると、鋼の強度が大きく低下する前にバリとして排出することになる。すなわち、低温でバリが発生することで、結果的に接合温度が低下する。このような原理を用いると、図1024)に示すように、薄板の接合も可能になる。


図10 線形摩擦接合で得られた薄板の継手24)

図1123)は、S45C(C:0.45wt%)LFW継手の硬さ分布に及ぼす印加圧力の影響を示す。硬さは、接合界面を跨ぐ形で界面に垂直方向に測定している。従来のLFWにおける印加圧力(100MPa)では、接合温度がオーステナイト(γ)単相温度範囲まで上昇するため、冷却中にマルテンサイト変態し、接合部が極めて硬く、かつもろくなる。一方、250 MPaの低温条件(高印加圧力条件)で接合した場合には、A1点以下の温度で接合されるため、材料は変態せず、硬さは変化しない。この条件下では、FSWと同様に、界面近傍に非常に微細なフェライト相と球状セメンタイト相が形成される。


図11 線形摩擦接合したS45C鋼の界面近傍の硬度分布23)

この平坦な硬さ分布は、接合後においても構造物中に機械的特性の特異点が存在しないことを意味し、今後、構造設計に対して大きな影響を与えると予測される。


< 参考文献 >

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25) Y.Aoki, R.Kuroiwa, H.Fujii, H.Murayama, M.Yasuyama, ISIJ Int., 59, 10 (2019) 1853-1859.

< 略 歴 >

藤 井 英 俊
(ふじい ひでとし)

1990年 早稲田大学大学院 理工学研究科 材料工学専攻 修士課程修了

1992年 早稲田大学 理工学部 助手

1993年 博士(工学)取得

1993年 新技術事業団/ケンブリッジ大学 日英共同研究 研究員

1995年 ケンブリッジ大学リサーチアソシエイト

1996年 大阪大学接合科学研究所 助手

1997年 大阪大学接合科学研究所 助教授

2010年 大阪大学接合科学研究所 教授

現在に至る


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