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鉄道車両へのFSW実用化

4.ツール開発と実用化

最近のツール開発事例を紹介する。FSWはツールからの回転力と加圧(荷重)を材料に与えるため、接合後のビード部には、回転痕とわずかな凹みが生じる。材料の寸法精度バラツキにより上面凹みは一定ではなく、場合によっては0.5mmを超えて深くなることも有る。そのため、構体外板の接合に適用した場合、疲労強度に影響を及ぼしかねない。この場合、グラインダー等で母材部と滑らかに接続するように凹み部を除去する仕上げ作業が行われる。

この課題を解決するために、ステーショナリショルダ(Stationary Shoulder:以下、SSボビン)ツールを開発した。ここで言うステーショナリとは、回転するツールの一部であるショルダーを無回転とする事を指す。無回転ショルダーの特徴は、ショルダーが接合部表面を滑るため平滑な表面が得られること、材料表面への回転力よる入熱がないこと、である2)

4.1 コンセプト

本ツールのコンセプトを図7に示す。図7(a)の従来形のボビンツールは上・下ショルダーとプローブが同一回転するのに対し、図7(b)のSSボビンツールは上ショルダーが無回転となるようスピンドルと上ショルダー間に回転自由度を与えている。このため、スピンドルの回転力はプローブと下ショルダーに伝達され、上ショルダーには伝達されない。図には紹介していないが、バリエーションとして下ショルダーのみをを無回転化、および上下両ショルダーを無回転化したツールも考案している3)。これらツールの効果は、スピンドル側の表面を平滑化、反スピンドル側の表面(ワーク裏面側)を平滑化およびワーク両面を平滑化できることとなる。

図7 SSボビンツールコンセプト(模式図)

4.2 SSボビンツールFSW

開発したSSボビンツールによる中空形材の施工状況と外観写真を図8に示す。図8 (a)は施工中のツール付近写真、スピンドルは回転しているが、上ショルダーは無回転でワーク表面を滑るように移動している様子が確認できる。図8 (b)に示す接合部外観は、接合したままの状態であるが無回転の上ショルダーが接していた表面は非常に滑らかであることが分かる。僅かに、接合方向に筋模様と円弧模様が確認できるが、接合部両側の素材部(形材の押出し加工表面)と同等の表面粗さとなることを確認している4)。中空形材の両側をSSボビンツールで接合した継手の断面を図9に示す。接合部の拡大写真を見ると、上面は素材部と接合部に段差がなく平滑であり、下面はショルダーにより若干の凹み、バリが発生していることが分かる。かくはん状態は良好で、ボイド等内部欠陥は観察されない。


(図をクリックすると動画が再生します)
図8 SSボビンツールによる中空形材の施工状況

図9 SSボビンツールで接合された中空形材の接合部断面

次に、SSボビンツールFSW、ボビンツールFSW、ミグ溶接の3種の継手について、静的引張試験により破断強度を測定した結果を表1に示す。ミグ溶接のおよそ170MPaに対し,ボビンツールFSWはおよそ210MPa(ミグ溶接の20%増)と高くなっているが、SSボビンツールFSWではおよそ230MPa(同30%増)とこれを更に上回っている。


表1 各施工法による接合継手の静的引張強度


継手の疲労について比較すると、疲労強さは、SSボビンツールFSWで100~120MPa、ボビンツールFSWで90MPaを示した4)。素材は軽金属車両委員会資料5)を参照し、A6005C(当時のA6N01材)でおよそ118MPa(12kgf/mm2換算)となる。SSボビンツールFSWの疲労強さは従来ボビンツールよりも値が大きく、素材に近いことが分かる。以上からSSボビンツールが、表面品質と継手強度の両面で優位であることを確認した。

*軸力タイプ引張疲労試験、応力比0、107回到達時に未破断


4.3 実用化

SSボビンツール用いて接合した側パネルを図10に示す。側パネルは全長18〜20m程度の中空形材7枚で構成されている。接合ビードの拡大部からも分かるが、ビード部とその両側の素材部が平滑となっている。パネル全体を見ても20mという長さにもかかわらず、平滑かつきれいな仕上がりとなっている。当該パネルを用いた完成車両を図11に示す。


図10 SSボビンツールによる側パネル

図11 SSボビンツールFSWを適用した車両例6)


(WE-COM会員のみ)